2019 Fiscal Year Research-status Report
データ同化と機械学習の融合による沈み込み帯の摩擦特性の時空間構造の解明
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18K03796
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 将行 東北大学, 理学研究科, 助教 (10739056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 真一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00334285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | データ同化 / 断層すべり / 摩擦特性 / 機械学習 / 地殻変動 / スロースリップイベント / GNSS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、観測データと物理モデルを直接比較し、場の物理量を推定するデータ同化と、推定結果から情報を最大限に抽出する機械学習を用いて、地殻変動観測データおよび断層運動と摩擦の物理モデルの両面からプレート沈み込み帯の摩擦特性の時空間構造を解明する手法の構築を最終目的とする。 2019年度は、地表面で観測された地殻変動データから、アジョイント法によりプレート境界面の摩擦特性を直接推定する手法を整備し、2003年十勝沖地震の余効すべりを模した数値実験により、妥当性を検証した。これまで、アジョイント行列を直接演算していたが、この行列は疎な行列であるため、行列演算せず微分方程式として解くことで計算時間が従来の数分の一程度に削減された。また、2次のアジョイント法を用いた摩擦特性の推定誤差評価手法を開発し、数値実験を用いて検証を行った。 開発手法を適用することを念頭に、昨年度までに琉球海溝南西部において約6ヶ月周期で繰り返し発生するスロースリップイベント(SSE)の解析を行い、2010-2013 年に発生したSSEの時間発展の振る舞いがSSE毎に異なることを示した[Kano et al. 2018]。2019年度は、解析期間を2018年まで拡張し、2013年以降整備された新規GNSS観測点を加えて、より多くのSSE解析に着手した。今後解析領域を浅部まで拡張し、陸域観測点のみで浅部の固着状態が解明できるか、について検討する。 SSE発生場の理解に向けた基礎研究として、四国西部で発生する短期的SSE発生時に、地震発生帯下部に位置する深さ20km程度のプレート境界でもゆっくりとしたすべりが同期して発生していること[Kano et al. 2019]、1970年代に紀伊半島で発生したSSEが現在観測されるものより規模が大きく、また再来間隔が長かった可能性[Kano and Kano 2019]を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ同化手法の高速化を行い、計算時間を削減したことで、リアルタイム化に向けてより迅速に摩擦特性の推定が可能になった。現在、このプログラムを用いて2003年十勝沖地震の余効すべり発生域の摩擦特性の推定と地殻変動の予測の再検討を行っている。一方で摩擦特性の時空間構造の解明に向けた機械学習手法の開発は着手した段階であり、両者の融合まではまだ至っていない。しかしながら、地殻変動データの解析による基礎研究として、SSEと巨大地震の時間的・空間的な関連性に関する新たな知見が得られた[Kano et al. 2019, Kano and Kano 2019]。この知見はデータ同化によりプレート境界の断層すべりを理解する上で重要であり、その意味でおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに整備したアジョイント法に基づき地殻変動データから摩擦パラメータを直接推定する手法を、2003年十勝沖地震の余効すべりデータに適用し、摩擦特性の推定とその精度を評価する。また、データ同化と教師なし機械学習のスキームであるクラスタリング手法を組み合わせて摩擦パラメー タの空間分布を推定する手法を開発し、数値実験によって性能評価を行う。八重山諸島で発生するSSEの解析を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
機械学習による摩擦特性の時空間分布の解明に向けて、京都大学で集中的に議論を行う予定である。
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Research Products
(13 results)