2018 Fiscal Year Research-status Report
プレートの地震波速度構造と断層ずれ伝播特性から探る深発地震の発生機構
Project/Area Number |
18K03802
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久家 慶子 京都大学, 理学研究科, 教授 (50234414)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 深発地震 / 内部構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、深発地震から到来するP波の低周波と高周波の時間差、S波振動の時間変化をもとに、深発地震および沈み込む海洋プレート周辺の地震波速度構造を調査した。 東北日本下では、先行研究で、深発地震から前弧側に到達するP波に低周波と高周波の時刻差が指摘され、metastable olivine wedge(MOW)と思われる低速域をもつプレートの地震波速度不均質構造で説明できることが示唆されていた。このことに着目し、北日本、小笠原諸島、およびトンガ・フィジー諸島で起こる深発地震のP波波形データを、低周波と高周波の時間差を指標にして調査した。MOWの影響が指摘されていたデータでは、この指標が機能することが確認できた。北日本の観測からは、MOWの領域が限定的な可能性などがあることがわかった。トンガやフィジー諸島の深発地震には、類似した観測とともに異なる特徴もみつかった。プレート内に低速度域があるとしても、楔型のような大規模な領域ではない可能性がある。また、小笠原諸島の深発地震では、プレート内を通過していないと思われるデータがみつかり、プレートの形状を拘束する情報になりうる。 一方、小笠原諸島の深発地震から西日本で観測されたS波に、系統的な振動方向の時間変化をみつけた。深発地震周辺のプレート構造の影響を受けている可能性があるため、その性質と原因を調べた。遠地の深発地震に類似した時間変化を定常的に観測することができないことから、原因となる領域は、観測点直下よりは震源域に近い方がよい。660km不連続の深さや地殻の厚さを変えても再現できず、マントルの異方性によるものかもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた内容の大部分を実施し、その結果として、まだ予備的なものではあるが、今後目的を果たすために重要になるかもしれないいくつかの成果をえることに成功しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
深発地震から到来するP波の低周波と高周波の時間差、S波振動の時間変化をもとに、初年度に実施した深発地震および沈み込む海洋プレート周辺の地震波速度構造の調査を継続する。初年度に予備的な結果を得ているが、内容を注意深く検討する必要があり、さらに調査を進める。国内外の学会で成果を発表し、取りまとめることを目指す。 地震波速度構造の調査を継続しながら、深発地震のずれ伝播速度の時空間分布およびプレート構造との関係の調査を開始する。はやい断層ずれからゆっくりした断層ずれへの変遷が深発地震に一般的な特徴なのかを調べるため、オホーツク海西部に起こった深発地震を調べる。この地域に対してはプレート内を通過した複数の近距離観測点の地震波データが使用でき、近くの小地震を用いることでプレート地震波速度構造を同時に調べられる可能性がある。ずれ伝播速度の時空間分布をKuge (2003)の手法や経験的グリーン関数法などから推定し、得られたずれ伝播特性とプレート構造との関係を検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度11月、フランスのCollege de Franceで開催された深発地震に関するシンポジウムに招待されて、講演を行った。当該年度に入ってから依頼されて決まったものである。本シンポジウムには、世界中の著名な深発地震の研究者が多数参加し、講演では当該年度に得られた研究成果も発表した。そのため、予定していた成果発表の目的が達成され、予定していた成果発表は次年度7月のIUGGで実施することがより有益であると判断した。
|