2020 Fiscal Year Research-status Report
アジア大陸東縁における白亜紀カルデラ火山噴火とプレートのロールバック過程
Project/Area Number |
18K03806
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
今岡 照喜 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (30193668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永嶌 真理子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80580274) [Withdrawn]
木村 純一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 上席技術研究員(シニア) (30241730)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 白亜紀 / カルデラ / 火山活動 / 西中国 / 韓半島 / U-Pbジルコン年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
西中国地域に分布する後期白亜紀カルデラ群と韓半島に分布するカルデラ群についての時空分布を明らかにして、それら形成時のテクトニクスについて議論する。両地域の花崗岩類については日韓の研究者によって今までに比較研究が行われてきた。一方で,両地域のカルデラはこれまでにそれぞれの国の研究者によって扱われてきたが、日本と韓国のカルデラを同様に扱い比較・研究を行うのは、初めての試みである。 カルデラの地質に関する総括、U-Pbジルコン年代、カルデラの形成の開始時期と期間、カルデラ形成前の安山岩の活動とカルデラ形成時(イグニンブライト・ステージ)のテクトニクスについて論じる。なお、本研究はプレートのロールバック過程で起こった様々な事象について明らかにすることを目的としているが、プレートの通常の沈み込みによる約70 Maの安山岩の活動(原岡山安山岩)を長門市で見いだして、それ以前のカルデラ形成(長門・豊北カルデラ)に預かるイグニンブライトの活動がその時まで終了していることを記述した論文、岩城島で筆者らによって発見された村上石の鉱物学的特性とリチウム同位体に関する論文および長登鉱山烏帽子抗で見つかった鉱物群の特性についての論文を発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西中国地域には吉部カルデラ(Murakami and Matsusato, 1970)、山口カルデラ(武田・今岡、1990)、匹見グラーベン・カルデラ(村上、1974; 今岡・村上、1987)、佐々並カルデラ(井川・今岡、1990)、白滝山カルデラ(吉田ほか、1990) の後期白亜紀カルデラが知られていた。今岡ほか(2019)は山陽側に分布する吉部カルデラと山口カルデラ、中国脊梁山地に分布する佐々並カルデラと生雲カルデラを比較した。その結果、山陽側に分布するカルデラは削剥が進み、カルデラ床、カルデラ陥没角礫岩、カルデラ内深成岩、環状岩脈などカルデラ深部-中部の構造がよく観察されるのに対して、脊梁山地に分布するものは溶岩ドームやカルデラを埋積するイグニンブライトやカルデラ湖の堆積物などカルデラ浅部の構造が比較的よく観察される。この研究においては新たに生雲カルデラを見いだすとともに、物見岳グラーベン・カルデラを提案している。このように今までに知られていた後期白亜紀カルデラに筆者らの新たな知見が加えられた。さらに加えて筆者らは新たに長門・豊北カルデラ、萩カルデラを見いだした。これらはその地質や年代が総括され「西中国地域後期白亜紀カルデラ群」として知られるようになってきた。これらのカルデラとほぼ同時代の韓国のカルデラについても知見がまとめられた。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の点に関する野外調査結果を補填し、西中国カルデラ群の地質について総括する。それに加えて韓半島のおもに慶尚盆地の白亜紀カルデラ群の地質のレビュー結果を比較検討する。日本海拡大前に戻すと、西中国の後期白亜紀カルデラ群は韓半島南部の後期白亜紀カルデラ群へと連続しており、ひとつのカルデラ群をなしているのである。そして年代は韓国側のものが若い。今まで共同研究者と行ってきた火山岩・環状岩脈・深成岩のU-Pb年代に基づいてカルデラの開始時期と継続時間、カルデラの形成場の移動、さらにはそれらのテクトニクスとを併せて国際誌に論文をまとめたい。テクトニクスに関しては、関門層群の安山岩の活動を中心とする先イグニンブライト・ステージとカルデラ形成が活発に行われた周南層群・匹見層群・阿武層群のイグニンブライト・ステージに分けて論じる。
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Causes of Carryover |
西中国地域には後期白亜紀カルデラ群が分布するが、このうちそれを構成する長門・豊北カルデラについてはそれぞれ独自のカルデラを形成すると考えられるが、2つのカルデラがオーバーラップする部分に関するカルデラ縁についての野外調査の一部が新型コロナウィルス感染症拡大のために遅れた。また新型コロナウィルス感染症拡大のために多数のU-Pbジルコン年代を測定していただいた谷氏と直接対面して議論する機会を設けることができなかった。萩カルデラについても、全体的な調査はすでに終了しており、火山岩層の岩相層序・構造については把握できている。火山岩層はベーズン内に分布する基盤岩類(関門層群)によって2つのべーズンに区分されているが、それと火山岩層の関係について詳細を明らかにしたい。未使用となった研究経費はまずこれらの調査費用にあて、残った部分は英文校閲など論文作成に必要な経費として使用したい。 当初予定していた補足的な野外調査と今まで共同研究者と行ってきた各カルデラを構成する火山岩・環状岩脈・深成岩類のU-Pbジルコン年代とを併せて日本と韓国のカルデラ形成当時のテクトニクスなどを論じた論文を作成して国際誌に投稿したい。
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Research Products
(6 results)