2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03807
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
志藤 あずさ 九州大学, 理学研究院, 学術研究員 (90376541)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋リソスフェア / 層状不均質構造 / Po/So波 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地震学的手法によって、太平洋の海洋リソスフェアの内部には層状不均質構造が広く分布することが明らかになった。その成因は、海洋リソスフェアそのものの生成・成長過程にも深く関わっていると考えられるが、いまだ未解明である。本研究の目的は、海洋リソスフェアの層状不均質構造の成因を明らかにすることである。この目的を達成するために、本研究では次の3項目を実施することを計画している。(1)全地球の海洋リソスフェアを対象とした層状不均質構造の系統的調査(2)層状不均質構造の岩石種の同定(3)層状不均質構造の形成プロセスの数値モデリング
このうち、当該年度は、(1)を行なった。具体的には、全地球の海洋リソスフェアを対象としたPo/So波の波形データ収集し、Po/So波の波形データの予備解析に着手した。その結果、大西洋・インド洋など主要な海洋リソスフェアを伝播するPo/So波のデータの質と量を調査し、本解析に足ることを確認した。また、予備解析により、大西洋リソスフェアを伝搬するPo/So波の継続時間は、太平洋のそれよりも短いという知見を得た。
海洋リソスフェアの内部構造からその生成・成長を解明する研究は、深海掘削、陸上に産出するかつての海洋リソスフェアの断片とされるオフィオライト岩体の観察、人工地震探査などの分野で行われてきた。本研究による地震学的解析は、浅部から深部まで海洋リソスフェア全体の情報を得ることができ、海嶺軸から遠い場所で起こっていると考えられるリソスフェアの「成長」過程の解明に対しても有効な研究手法の一つである。本研究により、層状不均質構造の成因の解明のみならず、地球のダイナミクスの基本プロセスである海洋リソスフェアの生成・成長過程のさらなる理解につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、当該年度中に海洋リソスフェアの層状不均質構造のパラメター(水平方向の長さ・鉛直方向の長さ・地震波速度不均質の強度)の決定まで行う予定であったが、想定以上の量のデータが存在し、その取得に時間を要したため、解析作業に着手するのが遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず収集したPo/So波のデータ解析に注力し、海洋リソスフェアの層状不均質構造のパラメター(水平方向の長さ・鉛直方向の長さ・地震波速度不均質の強度)を推定する。全地球の海洋リソスフェアの層状不均質構造のパラメターを系統的に調査し、拡大速度との関係に注目しながら、普遍性と地域性を明らかにする。
次に、推定された地震波速度不均質の強度をもとに、層をなす岩石の組み合わせを同定する。岩石学的研究を参照し、地震波速度と存在比を満足するような岩石の組み合わせを検討する。パイロキシナイトとペリドタイトまたは、クロミタイトとペリドタイトの組み合わせを候補として検討している。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記載したとおり、想定以上の量のデータが存在しその取得に時間を要したため、当該年度中に予定していたPo/So海洋リソスフェアの層状不均質構造のパラメターの決定を行うための解析作業に着手するのが遅れた。従って、解析作業に使用を予定していた計算機を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。
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