2021 Fiscal Year Research-status Report
太平洋域における海洋プレート浅部の地震波速度異方性構造の実体解明
Project/Area Number |
18K03813
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
利根川 貴志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 主任研究員 (60610855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10345176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋性地殻 / 異方性構造 / 太平洋域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、引き続き、太平洋域に設置された海底地震計で取得されたデータを使って、海洋性地殻の異方性構造を推定することである。昨年度は、ハワイ沖で取得されたデータを用いてレシーバ関数を計算し、signal-to-noise比の高いデータを選択した。今年度の目的は、このレシーバ関数の中から、海底堆積物の底やモホ面でP波からS波に変換したPs変換波を探索することである。 比較的質の良いレシーバ関数を得られたのは17観測点である。そのうち、ハワイ島の南東側では3観測点でラグタイム2秒と4秒あたりにPs変換波が確認できた。おそらくこの2秒が堆積層の底、4秒がモホ面に相当すると考えられる。北東側では0.5-1.0秒あたりに5観測点のうち3観測点でPs変換波が確認できたが、それより深部では複数の観測点に共通したPs変換波は見られなかった。南西側では9観測点のうち、2観測点で2秒あたりに、3観測点で4-4.5秒あたりにPs変換波を確認することができた。 上記のように、場所や観測点によってPs変換波の抽出具合が大きく変化するという結果になった。これは、おそらくハワイ周辺では、堆積層の底やモホ面での速度変化量が空間的に大きく変化しており、その影響でPs変換波の確認できる場所も変わったと考えられる。 本研究ではS波異方性構造の推定を目的としているが、そのためには堆積層の底とモホ面からの両方のPs変換波の抽出が必要である。今回の解析結果から、それらの抽出が困難であったため、異方性構造の推定には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では北西太平洋域でうまく適用できた手法をハワイ沖のデータに用いるために、ハワイ沖のデータを丹念に調べてPs変換波の有無を検証した。その結果、ハワイ沖では堆積層の底やモホ面で速度変化量が空間的に変化しているため、複数の観測点に共通したPs変換波を抽出することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、日本海溝近傍には定常的な海底地震計観測網が展開されている。本研究では、もう一度北西太平洋域に戻って、その新しいデータセットに同手法を適用し、以前得られたものよりも詳細な異方性構造の推定を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
ハワイ沖のデータでは良い結果が得られなかったため、海域を変えて同様の研究を進める予定である。そのためのデータストレージの購入にかかる費用を使用する。また、良い結果が得られなかったので学会等で報告などはしていないが、今後、成果を発表する際には、学会参加の旅費や論文出版料にかかる費用も使用する予定である。
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