2022 Fiscal Year Research-status Report
太平洋域における海洋プレート浅部の地震波速度異方性構造の実体解明
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18K03813
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
利根川 貴志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 主任研究員 (60610855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 教授 (10345176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 異方性構造 / 海洋性地殻 / 太平洋 / レシーバ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
太平洋域における海洋性地殻の異方性構造を推定するため、日本海溝東側に設置されたS-net(日本海溝海底地震津波観測網)のデータを活用した。S-netは2016年夏頃からデータを取得しているため、海域でのデータとしては非常に長期のものが提供されている。また、データの質もよく、これまでに遠地で発生した地震の記録を使って東北地方沖の海底下の構造を推定した研究も報告されている。そのため本研究でも、日本海溝東側の地震計で観測された遠地地震のP波と、それが海底下に存在する地震波速度不連続面で変換したPs変換波を用いて、(1)不連続面の抽出、(2)海洋性地殻の異方性構造の推定を試みた。 手法はレシーバ関数法を用いた。(1)の結果では、堆積層の底およびモホ面で変換したと考えられる2つのPs変換波が明瞭に抽出できた。日本海溝に沿って南側ではモホ面の振幅がやや小さくなるという水平方向の不均質性も確認できた。堆積層の厚さを推定したところ、その空間パターンは過去に構造探査で得られたP波往復走時の空間パターンと良い一致を示した。 (2)の結果では、堆積層とその下の海洋性地殻の2層の異方性構造を推定することができた。日本海溝に沿って北側では堆積層の速い軸方向はばらつくのに対し、南側では海溝軸に平行となった。海洋性地殻では北側では海溝軸に平行となり、南側ではばらつくという結果になった。今後これらの水平方向および2層の違いの解釈を試みる。また、この成果は日本地球惑星科学連合2023年大会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは開発した手法を太平洋域で取得された観測期間1年以下のデータセットにしか適用していなかったため、異方性構造の推定に活用できる十分な質の良いデータを得ることができなかった。しかし、今回約5年分のデータを使用することができたため、地震波速度不連続面の抽出はもちろん異方性構造を推定するのに十分なデータを活用することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
堆積層と海洋性地殻で異なる異方性パターンが得られた。今後はその成因の解釈を重点的に進める予定である。また、常時ノイズ記録を用いて、得られた結果の信頼性を評価することも検討している。
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Causes of Carryover |
得られた成果を日本地球惑星科学連合2023年大会で発表するため、その経費を計上する。また、データ保管用HDDの購入も計上する。
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