2019 Fiscal Year Research-status Report
第四紀堆積物の精密年代決定を目的とした超高精度Sr同位体層序の確立
Project/Area Number |
18K03814
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 技術研究員 (50548188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若木 仁美 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 短期研究員 (20817043)
高柳 栄子 東北大学, 理学研究科, 助教 (40729208)
吉村 寿紘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学プログラム), 研究員 (90710070)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射起源Sr同位体比 / Sr同位体層序 / 同位体比質量分析 / 第四紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、第四紀の海成堆積層や海洋底堆積物に対して地層の連続性に依存しないシームレスな地質年代決定を実現することを目的として、従来よりも高精度に放射起源Sr同位体比を測定する同位体分析技術を開発し、開発した分析手法を用いて第四紀Sr同位体層序の精密な再構築を目指すものである。本年度は、1)昨年度に引き続き放射起源Sr同位体比(87Sr/86Sr)を超高精度に測定する同位体分析技術の開発に取り組み、また、2)海洋底掘削コア試料から分離した有孔虫試料の超高精度放射起源Sr同位体分析を行う計画であった。分析技術開発については、表面電離型質量分析計を用いた超高精度Sr同位体分析手法の開発を昨年度より継続して行い、昨年度終了時点で達成していた分析精度と比較して2.5倍程度の分析精度向上に成功した結果、87Sr/86Sr比を+/- 0.002‰ (2SD)の繰り返し分析精度で長期的に安定して分析することが可能となった。第四紀における海水Sr同位体比の変動幅はおよそ0.2‰であるため、本研究ではこの変動を精密に決定するために十分な分析精度が達成できたと考えられる。次に、開発した手法を用いて、昨年度準備を行った海洋地球研究船みらいのMR14-02航海により採取された西赤道太平洋の有孔虫試料に対する超高精度放射起源Sr同位体分析を開始し、過去百万年の期間における海水のSr同位体比変動の高精度復元に取りかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に引き続き表面電離型質量分析計を利用した超高精度放射起源Sr同位体分析手法の開発を行った。昨年度には、ダイナミックマルチコレクション法の利用など分析条件の最適化によって87Sr/86Sr比の繰り返し分析精度+/- 0.005‰ (2SD)を実現した。本年度は、さらに補正法の改良などを行い、87Sr/86Sr比に対して+/- 0.003‰ (2SD) 程度の長期繰り返し分析精度を実現した。さらに、同一試料の繰り返し分析を複数回行うことで、87Sr/86Sr比の長期繰り返し分析精度+/- 0.002‰ (2SD) を実現できることがわかった。また、海洋地球研究船みらいのMR14-02航海により採取された西赤道太平洋の海洋底掘削コア試料に対して、0-1Maの年代範囲をおよそ10万年に3点くらいの割合でSr同位体分析を開始し、現在も分析を継続中である。Goldschmidt conference 2019にて、上記の研究成果の一部を発表した。また、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)の海洋底掘削コア試料については、昨年度より継続して有孔虫の分離および解析を行った。これらの進捗状況から、本研究は計画の通りおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、有孔虫試料の超高精度放射起源Sr同位体分析を継続し、第四紀海水のSr同位体復元を行う予定である。当初の予定では、現在すでに分析を始めている西赤道太平洋の試料に加えて、東太平洋低緯度域(コスタリカ西方沖:IODP Exp. 344)、東インド洋(オーストラリア西岸:IODP Exp. 356)の有孔虫試料の分析を並行して行う予定であった。しかし、本研究で開発した超高精度Sr同位体分析法では、通常の同位体分析とは異なり、1試料の同位体比測定にのべ24時間程度と非常に長い時間を要する。次年度の高知コア研究所におけるTIMSのマシンタイムの制約から、すべての試料を予定通り分析することは困難と考えられる。そこで、次年度は西赤道太平洋試料の分析を優先し、0-1Maの区間の海水Sr同位体比変動カーブを一つのサイトで復元することを第一の目標とする。マシンタイムの余裕によっては、複数のサイトで第四紀の海水Sr同位体比変動カーブの復元を行い、年代モデルの妥当性等を検証する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では本年度は、西赤道太平洋、東太平洋低緯度域、東インド洋の有孔虫試料のSr同位体分析をそれぞれ並行して行う予定であった。しかし、本研究で開発した分析手法では、当初の想定よりも1試料のSr同位体分析に大きく時間がかかることから、本年度は西赤道太平洋の有孔虫試料分析のみを行った。そのため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、主に実施を次年度に繰り越した東太平洋低緯度域の有孔虫試料の分離ならびに分析のために用いる予定である。
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Research Products
(4 results)