2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03817
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
松原 尚志 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30311484)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 暁新世 / 貝類 / 分類 / 古環境 / 古生物地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は北海道東部の厚岸および浜中地域に分布する暁新統根室層群霧多布層,および,北海道北部の中頓別地域に分布する暁新統函淵層群奥宇津内層の貝類化石群を対象として野外調査と化石標本の採取を行うとともに,室内における標本のクリーニング作業と分類学的研究を行った。 厚岸地域大黒島に分布する霧多布層中部からの7産地から2019年度に採取した化石試料について,さらに分類学的研究を進めた結果,腹足綱11種,掘足類2種,二枚貝綱14種を同定することができた.化石貝類の共産関係と産出頻度から,Pectinodonta群集,Kangilioptera群集,Acila-Megayoldia群集の3つの化石群集が識別された.これらの群集には白糠丘陵地域の暁新統根室層群活平層や南サハリンのSinegorsk層中部の貝類化石群との共通種が含まれることが明らかとなった.これらの研究成果については,2021年2月に開催された日本古生物学会第170回例会において講演を行った. また,2020年6~8月にかけて浜中地域の霧多布島に分布する霧多布層中部の上部の2産地から採取した化石試料からは,腹足綱5属5種,二枚貝綱6属6種を識別した.より下位層準にあたる大黒島の霧多布層との共通種は2種含まれ,また,白糠丘陵地域の活平層とは5種の共通種が認められるが,しかしながら,これらの地層の貝類化石群に含まれるいくつかの属・種については共通しないことが明らかとなった. 一方,2020年9月に実施した中頓別地域の函淵層群奥宇津内層からは2産地から貝類化石試料を採取した.クリーニング作業および,分類学的な検討の結果,腹足綱1属1種,掘足綱1属1種,二枚貝綱5属5種を識別し,これらのうち,比較的多産するDelectopecten属の種は新種であることが明らかとなったが,より詳しい分類学的な研究のためには追加標本が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
北海道東部の釧路東部・厚岸・霧多布地域を対象とした研究は概ね計画通りに進んでいる。 しかしながら,当初,研究予定であった足寄地域の根室層群の分布域にアクセスするための林道が2016年以来,復旧しておらず,調査が困難な状況が続いていること,また,新型コロナウイルスの影響により,2019年度は中止となった高知県中村-宿毛地域の暁新統百笑層および,暁新統とされる熊本県天草下島地域の姫浦層群上部亜層群最上部の調査・化石試料採取の目処が立たないこと,および,同じく新型コロナウイルスの影響により,後期白亜紀~始新世貝類のタイプ・参照標本を所蔵している大学・研究機関等で外部研究者の利用が制限されていることにより,分類学的研究が滞っていることにより,進捗状況は遅れていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
北海道東部厚岸・浜中・釧路町東部地域の根室層群上部の貝類化石群については研究成果の学会での発表を行うとともに,論文原稿の執筆を進めていく. 北海道北部中頓別地域の函淵層群奥宇津内層については追加調査の上,追加試料を採取し,さらなる検討を進めていく. 新型コロナウイルスの影響により,2019年度に続き中止となった高知県中村-宿毛地域の百笑層と熊本県天草下島地域の姫浦層群上部亜層群最上部の調査と貝類化石試料の採取,および,他大学・研究機関所蔵のタイプ・参照標本については,新型コロナウイルス感染症対策のための移動制限・利用制限等の状況を鑑みながら実施方法を検討の上,研究を進めていく. 尚,2021年度は本研究の最終年度であるが,新型コロナウイルスの影響により研究全体が遅れており,今年度のみで調査・試料採取が完結しない場合には,研究期間を1年間延長の上,研究を完結させる予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,日本古生物学会2020年年会(岡山理科大学)および日本地質学会第127年年会が中止となったこと,日本古生物学会第170回例会(横浜国立大学)がZoomによるリモート開催となったこと,高知県宿毛-中村地域と熊本県下天草地域での調査・化石試料採取のための出張を延期したこと,および,白亜紀後期~古第三紀始新世のタイプ・参照標本所蔵大学・研究機関の外部研究者の利用制限により,出張を延期したことによる. 新型コロナウイルス対応の状況にもよるが,今年度,次年度使用額については延期となっている高知県宿毛-中村地域と熊本県下天草地域での調査・化石試料採取のための出張旅費,および,白亜紀後期~古第三紀始新世のタイプ・参照標本所蔵大学・研究機関への出張旅費として使用する予定である.
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Research Products
(1 results)