2018 Fiscal Year Research-status Report
海氷季節分布と周南極流流路の変動史復元による近未来予測
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18K03823
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須藤 斎 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80432227)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 古環境 / 南大洋 / 珪藻 / 黄金色藻 / 海氷 / 海洋構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
南大洋において冬季に形成され,夏季には融解して分布範囲を大きく変動させる海氷は,深層循環や周極流にも強い影響を与えているが,地球環境変動予測に必要な過去数百万年間における海氷分布の季節的な変動に関しての知見はほとんどない.そこで本研究では,夏季・冬季海氷分布域のそれぞれに卓越する現生珪藻の分布データを,海底掘削コア試料から産する珪藻や珪藻休眠胞子,黄金色藻類シストなどの微化石群集変遷記録に応用し,過去の季節変動を含めた海氷分布変遷のみならず,海氷生成域での鉛直混合,南極周極流の流路変動などを復元すること,また,より詳細な近未来気候変動予測に対して貢献できる新たなデータを提供することを目的とした. これまでに,海底堆積物試料DSDP Site 513およびODP Hole 689B,745B,1165Bを用いて,珪質微化石群集解析を行った.その結果,現生生物群集の分布・組成等と比較することで,夏季・冬季海氷分布域や周極流の北側,鉛直混合(湯昇流)域に卓越する海生珪藻類,海氷・氷床域の淡水珪藻・黄金色藻類の化石群集を特定することに成功した.また,これまでその生態が明らかとなっていなかった絶滅種(化石群集)のうち,複数の古生態が明らかとなり,これらの群集変動を見ることで,未解明であったより古い時代の海洋環境を復元することが可能になると考えられる. 2018年度には南大洋ロス海から,また2019年3月~5月にかけて南極半島周辺において新たに海底掘削航海が実施されており,当該研究計画の残り二年間でそれらの航海で得られた試料を新たに分析を進めていく.これまで分かった古環境指標種生物の情報を併せることにより,過去400万年間の南大洋域の海氷分布や南極大陸上の氷床発達,鉛直構造や海流流路などの変遷を明らかにしていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究一年目で,過去の研究成果との比較をもとに,海底堆積物試料DSDP Site 513およびODP Hole 689B,745B,1165B試料を用いて,本研究計画の基礎データとなるこれまで明らかでなかった様々な古環境指標種の確定やそれらの変遷を解明できた.また,当初研究の核として予定していた南大洋ロス海から採集された海底堆積物試料の分析のための作業はほぼ終了している.咥えて,計画後に参加することが決定した南極半島周辺における海底掘削計画航海が現在行われているところであり,計画1年目に得られたデータや研究成果を用いることによって,当該研究計画の目標を上回る成果を出せると期待できる. 一方で,新たに得られた試料(ロス海および南極半島周辺)は,これまで扱ってこなかった海域・時代のものを含むため,またこれまで主として分析を行ってきた指導学生3名が卒業・就職したため,今後二年間の分析スピードはやや遅れる可能性があるが,今後の分析を同様に継続していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで主として分析を行ってきた指導学生3名が卒業・就職したため,珪藻・黄金色藻化石群集解析に関して作業がある程度遅くなる可能性がある.しかし,うち2名は高知大学コアセンターと産業技術総合研究所に研究職として異動しており,これまでの研究を共同研究者として継続できる体制にある.また,申請者も各海域の珪藻休眠胞子の分析を主に行っていく予定であるが,これまで様々な海域における休眠胞子化石の分類と群集解析を行ってきており,それらの手法を当該試料にも応用できると考えており,成果を出すことは難しくない.
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Causes of Carryover |
当初見込み予算よりも顕微鏡本体の金額が安価になったため
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