2020 Fiscal Year Annual Research Report
Computer simulation on material synthesis for origin of life
Project/Area Number |
18K03825
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 成典 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (10379480)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生命の起源 / 第一原理シミュレーション / 分子動力学法 / 密度汎関数法 / 化学反応 / 硫化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、原始地球でタンパク質や核酸などの生命分子がどのように形成されたか、また、そこから生命系がどのように誕生したかを探る理論ならびに計算機シミュレーション研究を行っている。これまでに、大量の隕石の飛来がもたらした衝撃波のエネルギーによって非還元的小分子(水、窒素、二酸化炭素など)から還元的分子(アンモニア、メタンなど)やアミノ酸・核酸・糖などが生成されたとする仮説に基づき、主に第一原理量子力学的動力学シミュレーションにより、隕石に含まれる鉄を触媒として、高温高圧下でアンモニアや各種炭素化合物の生成が確認され、仮説を裏付ける計算結果が得られた。また、化合物生成に至る様々な反応メカニズム・反応経路について詳細に議論し、論文報告した。ところで、現在の生命起源論においては海底の熱水噴出孔が注目されており、そこでは反応を促進する上で、鉄イオウクラスターの果たす役割が重要であると考えられている。そこで、我々はまず、硫化鉄の触媒作用に着目した化学反応シミュレーションを試みたが、その検証のために計算の高速化が必要となった。そのため、第一原理手法である密度汎関数法に経験的パラメータを組み込み計算の精度維持と高速化を可能にする、強結合近似に基づく密度汎関数法(DFTB)に着目し、その開発を進めた。DFTBパラメータには、硫化鉄のシミュレーションに必要なFe-S間のパラメータが報告されていないため、その開発を行い、Pyrite 構造に対して、格子定数、体積弾性率、定積熱容量などの実験値の再現が可能となった。これらの成果を踏まえ、硫化鉄を触媒とする生命分子生成シミュレーションに加え、反応シミュレーションをさらに高速化するための機械学習ポテンシャルの作成や、熱水噴出孔を想定した化学反応ネットワークのデータベースに基づく再構成などにも取り組み、新たな成果を得た。
|