2018 Fiscal Year Research-status Report
粗骨材粒を含む多孔質耐火れんがの構造モデル化と非線形変形挙動解析に関する研究
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18K03835
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
坂井田 喜久 静岡大学, 工学部, 教授 (10334955)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔質耐火れんが / 非線形変形 / 減衰要素 / 粗骨材粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
粗骨材粒を含むレンガ全体と粗骨材粒の弾性率を測定するため,レンガから大型の曲げ試験片と,骨材粒原料のMgOとスピネルの粒状焼結体から厚さ5mm程度の平板をそれぞれ作製した.ついで,共鳴振動法によりレンガ全体の動弾性率を測定した結果,縦振動から求めた動ヤング率は38GPaであった.一方,縦波と横波の各振動子を用いて超音波パルス法によりMgOとスピネルの粗骨材平板を熱乾燥させて動弾性率を測定した結果,動ヤング率は275GPaと295GPaとなり,粗骨材粒の気孔率が7%と5%であることがわかった.また,レンガ全体が2種類の粗骨材粒と中粒以下を焼き固めた多孔質母材から構成されると考えて,多孔質母材の初期ヤング率を複合則から導いた結果,24GPaであることがわかった. 次に,曲げ試験片の引張側と圧縮側の各表面に長さ30mmと1mmのひずみゲージを貼り付け,曲げ荷重に対するレンガ全体のマクロひずみとMgOとスピネルの粗骨材粒の局所ひずみの変化挙動をその場測定した.その結果,曲げ試験片の荷重ひずみ線図は,すぐに上に凸の非線形挙動を示し,引張側のひずみが常に圧縮側よりひずむ傾向があること,ある荷重レベルまでは,負荷/除荷を繰り返しても荷重ひずみ関係はほぼ可逆的であることがわかった.その一方で,レンガ全体のマクロひずみに対するMgOとスピネルの粗骨材粒の局所ひずみの比は,曲げ試験の開始時は引張側と圧縮側でほぼ一定値を示すが,荷重が増すにつれて,引張側では単調減少する傾向があるのに対し,圧縮側では単調減少した後,ある荷重レベル以上に達すると一定値を示す傾向があり,引張荷重下と圧縮荷重下での非線形変形挙動に明らかな差があることを実験的に明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた曲げ試験片と2種類の粗骨材平板を作製し,縦波振動子と横波振動子やレンズ,真空炉を導入して,研究内容1の初期弾性率を実測することができ,複合則により,実測が難しいと考えていた多孔質母材の初期弾性率を見積もることができた.また,非線形挙動を発現する構造モデルを模索するのに必要な基礎データを取得することができた点で研究は概ね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は,非線形変形挙動を示すレンガの力学特性を表現する複合モデル化にチャレンジする.そのために,まず,曲げ試験の荷重速度を変化させて,荷重ひずみ線図の速度依存性の有無を実験的に明らかにする.また,供試れんがは,非線形な変形挙動を示すが,素材そのものは多孔質セラミックスであり,レンガ全体の弾性率は約40GPaと非常に低いが,マクロひずみも100με以下と非常に小さく,短軸引張試験は物理的に不可能であるため,曲げ試験を主体とした研究計画を立案しているが,初年度の研究結果から曲げ時の引張面と圧縮面の非線形挙動を把握することができたが,ひずみ変化が圧縮と引張で明らかに挙動が異なることから,引張と曲げの応力場が共存する曲げ試験結果のみからは,レンガの構造モデル化に必要なデータが不足しているといえる.そこで,供試れんがの圧縮試験片を作製し,新たに短軸圧縮試験を行うことで,構造モデル化に必要なデータを取得し,短軸圧縮場での非線形変形挙動の構造モデル化から行う.
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