2018 Fiscal Year Research-status Report
Construction of quantitative electromagnetic non-destructive inspection technique in complex 3D shape portion with consideration of direction and strength of magnetic field and current
Project/Area Number |
18K03843
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福岡 克弘 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (40512778)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 非破壊検査 / 磁粉探傷試験 / 渦電流探傷試験 / 磁化 / 回転磁界 / 定量的評価 / 高感度化 / 鉄鋼材 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラント構造物や機械部品を安心・安全に使用するためには、検査対象の隅々まで漏れなく検査でき、微小な傷まで発見可能な非破壊検査手法が必須である。しかし、プラント構造物や機械部品は複雑な形状部を有しているのが一般的であり、それらの部位における検査の信頼性向上が喫緊の開発課題となっている。本研究では、立体的で複雑な形状をした部位における効率的で且つ信頼性の高い検査を実現するため、磁気と電流の強度とその方向を3次元的に制御した高速・高精度・高感度な電磁非破壊検査システムの検討を試みた。さらに、探傷結果から傷形状を定量的に評価するのに有利な探傷手法、およびその定量的評価手法を検討し、探傷と評価の両面における高度化を目的とした。以下の3項目の研究内容に取り組んだ。 1. 3次元回転磁界による複雑形状部の全面および全方向磁化…複雑形状部を有する立体形状試験体の磁化の最適化に関する研究に取り組んだ。3次元回転磁界発生磁化器を用いて、試験体の全試験面において、全方向に均一な磁化が可能な磁化システムの最適条件設計を検討した。 2. 磁気探傷試験による極微小傷の探傷と傷形状の定量的評価…開発した磁化システムを、漏洩磁束探傷試験および磁粉探傷試験に適用し、複雑形状をした被検査体の全面において極微小傷を検出することを検討した。さらに、数値解析による傷からの漏洩磁束密度と磁粉探傷試験結果から、一般的には不可能とされている磁粉探傷試験における傷形状の定量的評価を検討した。 3. 渦電流探傷試験による極微小傷の探傷と傷形状の定量的評価…開発した磁化システムを渦電流探傷試験に適用することにより、鉄鋼材を対象とした渦電流探傷試験の高感度化を検討した。さらに、自然傷の定量的評価に有利な2方向に均一な渦電流を流すプローブを検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、「1. 3次元回転磁界による複雑形状部の全面および全方向磁化の検討」を中心に、試験体の磁化の最適化に関する研究に取り組んだ。磁気を用いた磁気探傷試験では、傷に対して直交方向に磁化すると、傷から漏洩磁束が発生し、それを検出することで傷が発見できる。しかし、その磁化の方向や強度が適切でない場合は、傷の見落としにつながる。特に、複雑形状部を探傷する場合、検査対象箇所に磁化器を直接配置できない場合や、検査対象となる傷に対して適切な方向に磁化を与えることが困難な場合も多い。本研究では、先行研究にて開発した3次元回転磁界発生磁化器を用いて、複雑形状部を有する試験体の全試験面において、全方向に均一な磁化が可能な磁化システムの最適条件設計を実施した。対向して配置した2個の磁化器間の電流位相の相対関係を最適設計することで、磁化の強度と方向を3次元的に制御できることを確認した。 具体的には、有限要素法を用いた数値解析により、機械部品を模擬した複雑形状部を有する試験体の各部における磁束密度分布(磁化分布)を評価し、試験体の各部において磁粉探傷試験を実施するのに必要な磁束密度が、強度および方向共に得られているかを確認した。なお、試験体は実際の磁粉探傷試験を実施することを考慮し、検査液の流れを作るために角度を付けた配置として評価し、配置角度の違いによる磁束密度分布も比較評価した。 さらには、機械部品を模擬した十字形状試験体とH形状試験体を作製し、試験体各部に円形傷を放電加工により付与した。この試験体を用いた磁粉探傷試験を行い、傷への付着磁粉量を確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に即して、次年度以降の研究を推進する。具体的な推進方策を以下に示す。 1. 3次元回転磁界による複雑形状部の全面および全方向磁化・・・十字形状試験体とH形状試験体において試験体各部に設けた傷の磁粉探傷試験を、探傷条件を変化させて実施し、傷への付着磁粉模様の実証評価を行う。模擬試験体に加えて、実際の自動車部品を対象とし、数値解析による試験体内部の磁化について検討する。 2. 磁気探傷試験による極微小傷の探傷と傷形状の定量的評価・・・磁粉探傷結果である磁粉模様を用いた傷形状の定量的評価手法の高精度化を検討する。傷からの漏洩磁束密度測定に高感度磁気センサを適用することを検討し、有限要素法解析による漏洩磁束密度の解析結果、および高速度カメラを用いた磁粉模様形成における画像計測結果から、傷形状の定量的評価を試みる。 3. 渦電流探傷試験による極微小傷の探傷と傷形状の定量的評価・・・渦電流探傷試験により強磁性体を高感度に探傷するため、直流および交流磁気飽和渦電流探傷試験システムを構築する。交流に関しては、本研究で開発した3次元回転磁界型磁化器の適用、および商用周波数以外の周波数を用いた磁化についても検討する。さらに、傷の定量的評価に有利な2方向励磁相互誘導型回転渦電流プローブの開発を検討する。
|
Causes of Carryover |
平成30年度は、既に整備されている機材を用いての実験および数値解析を実施した。次年度以降に、目的とする新たな探傷方法を実現させるため、現在使用中の渦電流探傷試験装置および数値解析システムの改良もしくは新規購入を予定しており、まとまった予算が必要となる。また、2019年に海外で開催の国際会議での研究発表を予定している。さらに、新たな試験体の作製(試験体の形状および傷の種類を増やす)も検討していく。
|