2019 Fiscal Year Research-status Report
不均一変形の力学モデリングプロセスの確立と変形集中を低減する材料の開発
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18K03844
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
内田 真 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90432624)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不均一変形 / 非局所 / 寸法依存性 / 微視構造 / デジタル画像相関法 / 2次均質化法 / ひずみこう配 / 応力こう配 |
Outline of Annual Research Achievements |
工業材料は微視的な不均質性を有しており,それが巨視領域の力学特性に大きく影響する.特に,微視領域と巨視領域の寸法比が1に近づくほど,微視的不均質性によって生じる不均一変形が,巨視領域の不均一変形に影響を及ぼすことにより,材料構造の寸法に依存した力学特性を示すことが考えられる.本研究では,ひずみ,ひずみこう配,応力,応力こう配を関係づける非局所的な構成式を実験に基づいて定式化し,それにより材料の寸法に依存した変形挙動をモデル化することを目的としている. 実験では,3Dプリンタを用いて人工的な微視構造を有する試験片を作製し,力学応答に及ぼす微視構造の寸法の影響について調査している.また,結晶粒径の異なる多結晶金属に対し,巨視的な応力こう配を与えたときの不均一変形を,デジタル画像相関法を用いて評価し,微視および巨視的な不均一変形の相互作用を定量化することを試みる.さらに,今年度より,磁石を用いた周期的な人工不均質構造を用いた不均一変形の評価についても新しく開始した. 上記と並列して,微視的な不均質構造が巨視領域の不均一変形に及ぼす影響を数値シミュレーションによって評価するために,多結晶金属材料の不均一変形に関する2次均質化法に基づく有限要素解析を実施した.同手法は,従来の均質化法に基づいて仮想仕事を見積もる際に,巨視的なひずみこう配に対する微視構造の仮想仕事を加えることで,スケール間の相対寸法の影響を評価することを可能とするものである.シミュレーション結果により,微視構造の相対寸法が大きくなるほど巨視的なひずみ集中が顕著になることが分かった.本研究により得られた解析と実験結果を比較することにより,最終年度も不均質構造を有する材料の不均一変形のモデル化を進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの実験により,3Dプリンタを用いて作製した試験片はフィラメントの密度分布が材料の力学特性に影響することがわかったため,試験片成形の際はフィラメント濃度を最密にして再度データを取得した.その結果,用いた試験片寸法の範囲では,フィラメントスケールの不均質構造による寸法の影響は見られなかった.今後,寸法の異なる周期構造を有する試験片を成形し,材料の寸法依存性挙動についてより詳細に検討する. 多結晶金属材料の不均一変形の評価においては,粗大結晶粒試験片に異なるレベルの応力こう配を与えることにより,微視および巨視的不均一変形の相互作用について調査している.今年度は,結晶粒径を固定して試験片寸法を変化させた実験を実施した.その結果,結晶粒の相対的な寸法が大きくなるほど,試験片の強度が低下することが確認された.これは,微視構造と巨視構造の相対寸法が近づくほど,微視的な不均一変形が巨視的な不均一変形を促進することに起因していると考えられる. 数値解析による研究では,2次均質化法を用いて,実験を模擬した多結晶金属材料の不均一変形挙動の有限要素シミュレーションを実施した.シミュレーション結果から,微視構造の相対寸法が増加するほど,巨視的な変形集中が顕著となることがわかった.このような結果は,局所的にみると実験結果と同様な傾向であるといえる.しかしながら,全体的にみると,実験ではランダムな箇所に変形集中が多発しているのに対し,解析では巨視構造を均質体として取り扱っているため,そのようなランダムな変形は生じなかった.この結果は,均質化法を適用できる範囲の限界を示すものであり,巨視寸法に対して相対的に大きな不均質構造を有する材料の不均一変形を予測する際は,材料の不均一変形を実験結果に基づいて直接定量化することが重要であることを示唆している.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の最後の部分に既述したように,2次均質化法を用いて微視的不均一構造を有する材料の変形挙動をモデル化した場合,局所的には不均一変形の寸法依存性を捉えることが可能であるが,巨視領域は均質体としてモデル化されているため,実験結果において観察されるような,全体的なランダム変形を数値的に表現することは難しいことが分かった.そこで今後の研究では,実験により評価された不均一変形を直接的に定量化することが重要な課題となる.そのために,応力,応力こう配,ひずみ,およびひずみこう配を実験結果に基づいて関係づけ,それを多軸化するプロセスを構築する. まずは,弾塑性材料の構成式として広く用いられているJ2流れ則をベースとし,相当応力速度,相当応力速度こう配,相当塑性ひずみ速度,相当塑性ひずみ速度こう配の関係を考える.これまでに実施した様々な実験結果に基づいてそれらの相関性を調べ,材料の不均一変形の寸法依存性について検討する.弾性変形に関しては,多軸化された非局所構成式を導出しているため,それに降伏条件や加工硬化を導入することで,構成式を弾塑性変形へと一般化する.そして,実験結果に基づいた材料パラメーターを導入し,材料の寸法に依存した形式の不均一変形の再現を試みる. 上記の研究と同時に,様々な結晶粒径を有する多結晶金属材料や,3Dプリンタや磁石を用いて作製した人口不均質構造を有する試験片を用いて得られた不均一変形に関する実験結果を精査し,数値シミュレーションとの類似点や相違点を調査する.それにより構築手法の理論背景や妥当性,ならびに適用範囲などを検証し,必要な修正を加えることで,手法の一般化を目指す.最終的には,研究期間内に不均一変形を抑制できるような微視構造の設計指針を示すことを目標とする.
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