2018 Fiscal Year Research-status Report
グローバル画像相関法と逆問題解析による粘弾性材料特性評価法の確立
Project/Area Number |
18K03845
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
米山 聡 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90306499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 逆問題解析 / 粘弾性 / ひずみ測定 / 画像相関法 |
Outline of Annual Research Achievements |
画像相関法を利用した変位・ひずみ場測定を行い,得られた測定結果を入力として線形粘弾性体の独立した2つの材料特性である緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数を同時に得る方法の基本原理を確立した.この方法では,非一様ひずみ場となる平面応力状態の試験片に負荷を与え,荷重値の測定と同時に面内変位分布を画像相関法により測定する.得られた変位分布の変化からひずみ分布の変化を得ることができる.この荷重値および変位分布の測定結果と任意に設定した仮想変位場を入力として,粘弾性材料特性を求める.その際,材料特性は初期値を用い,ひずみの変動から履歴積分により応力の変動を求める必要があるが,平面応力状態では厳密にはその計算を行うことができない.現時点ではこの計算を簡略的に行うこととした.提案する方法により,第2項までのプロニ級数で表した緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数を同時に求めることが可能となった.まずは測定値の代わりに有限要素法により得られた変位分布を入力として提案する方法の原理が正しいことを確認した.次に実際に測定により得られたデータを用いて提案する方法の有効性を検証した.その結果,各測定温度において第2項までのプロニ級数で表した緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数を同時に求めることが可能であることを示した.さらに,種々の温度の測定結果にこの方法を適用し,得られた結果から時間・温度換算則を用いてそれら材料特性のマスタ曲線を得ることが可能であることを示した.現時点では,面内のひずみの測定値から応力を計算する際に板厚方向のひずみを弾性体と同様の方法により求め,それらから面内の応力を計算している.この部分は数値ラプラス変換を利用した計算方法を提案した.この方法は今後改良を行いながら有効性を検証し,提案した材料特性の逆解析法に組み込む予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案した緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数を同時に得る方法を実現するためには複雑な計算を必要とする.すなわち,まず材料特性値(緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数のプロニ級数の係数)の初期値を設定し,得られたひずみ分布の時間変化から各測定点の応力を履歴積分により求める.この時々刻々と変化する応力成分の分布と任意に設定した仮想変位を用いてプロニ級数で表された緩和体積弾性係数および緩和せん断弾性係数を求める.その際,未知材料特性の係数に関する非線形連立方程式を解く必要があるが,方程式を未知数により解析的に偏微分することができないため,数値微分を利用する.すなわち,材料特性値を微小変化させて応力を算出することで,方程式を材料特性値で偏微分した値を求め,非線形連立方程式を解く際の偏微分行列(ヤコビ行列)を求める.非線形方程式を繰り返し計算で求めるが,その繰り返しの度に応力を履歴積分により計算する.このような複雑な非線形連立方程式を解くプログラムの開発を行った.有限要素法により得られた変位分布を入力として材料特性値を求めることでこのプログラムが正しく動作すること,および提案する方法そのものが正しいことを示した.さらに,粘弾性体においては平面応力状態では面内のひずみ履歴から応力の変化を求めることができない.この問題を克服するため,粘弾性体の擬弾性に着目し,数値ラプラス変換を利用した計算方法を提案した.このように研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
上述した数値ラプラス変換を利用した計算方法,すなわち面内のひずみの測定値から応力をラプラス変換面において求める方法を確立する.この方法を提案する逆問題解析方法に組み込むことで,独立した2つの材料特性値を正確に求めることを可能とする.さらに,提案する方法により独立した2種類の材料特性を幅広い時間領域で精度良く求めることのできるような試験片形状および負荷条件を評価・選定する.そのために,測定の代わりに有限要素粘弾性解析を利用したシミュレーションデータを利用する.なるべく多くのプロニ級数の係数が得られるような応力・ひずみ分布となる試験片形状・負荷条件・温度条件を決定し,その結果を用いて試験温度条件や負荷速度などの全ての試験条件を決定する.ただし,10数桁にわたる幅広い時間範囲の材料特性を一度に得ることできるとは到底考えられない.したがって,種々の温度条件下での測定結果を利用して幅広い時間範囲の材料特性を得ることができる時間・温度換算則の導入を視野に入れつつ研究を行う.平行して測定誤差による影響を検討する.弾性材料においては測定誤差を考慮して適切な仮想変位分布を決定する事が可能であるが,粘弾性材料においてもそのようなことが可能かどうか検討を行う.
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