2018 Fiscal Year Research-status Report
繊維強化複合材料の損傷を考慮した非線形力学モデル構築のための実験的評価手法の確立
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18K03848
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
荻原 慎二 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (70266906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繊維強化プラスチック / 非弾性力学挙動 / 積層構造 / 損傷 / 有限変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
連続繊維強化積層型複合材料は,一方向に連続繊維にて強化された層を多方向に積層したものである.繊維強度を十分に利用する構造設計を行う場合は,繊維の破断ひずみは小さいことから,通常微小変形の範囲で線形弾性材料として設計される.このことから,有限変形を考慮した粘塑性解析はほとんどなされていない.本研究では,異方性・損傷の影響を考慮した適切な材料モデルの選定とパラメータ同定法の検討を目的としている.すなわち,繊維強化複合材料の有限変形下における損傷を考慮した非弾性力学挙動の高精度モデル化を可能とすることを最終目標としている.そのために,種々の積層構造の応力―ひずみ関係の実験的評価,材料内部の損傷挙動の定量化,力学挙動の速度依存性に関する評価を行い,適切な材料モデルの選定とパラメータ同定法の検討を行う.これにより,用途に応じた,より材料の特性を活かした積層構造設計が可能となることが期待される. 平成30年度はアングルプライ積層板の非線形力学挙動の実験的評価とモデル化の第一段階として,アングルプライ積層板の中でも,まずは繊維角度45°の場合に着目しその非線形挙動の実験的評価を行った.この積層構成を選ぶ理由は,マトリックス材料の非線形性の影響を大きく受けることにある.行う試験は,①力学挙動の速度依存性を検討するため,ひずみ速度を変化させた単調引張試験,②粘性評価のためのひずみ漸増応力緩和試験,③塑性ひずみ及び損傷による弾性率変化評価のためのひずみ漸増負荷-除荷試験,である.これにより,粘塑性挙動モデル化の基礎とする.さらに,負荷-除荷サイクル中のその場観察や負荷を途中で止めた試験片の観察により材料内部の繊維配向変化や損傷状態の定量評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度はアングルプライ積層板の非線形力学挙動の実験的評価とモデル化の第一段階として,アングルプライ積層板の中でも,まずは繊維角度45°の場合に着目しその非線形挙動の実験的評価を行った.これには以下の手法を組み合わせて行った.①光学顕微鏡による端面その場観察,②レプリカ法を用いた観察,③SEM(走査型顕微鏡)による微視観察,④軟X線探傷装置.これらの結果から,損傷状態の定量化に適切なパラメータ(クラック長さ,クラック密度,はく離面積,はく離率)などを選定し,定量化を行う.得られた実験結果から,繊維強化複合材料の損傷を考慮した非線形力学モデルの構築を試みた.ひずみ漸増応力緩和試験での緩和後の応力―ひずみ関係を平衡状態(速度非依存弾塑性)応力―ひずみ関係と考え,ひずみ速度を変化させた単調引張試験より,速度依存パラメータを得た.以上のことから,今年度の進捗状況はおおむね順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は前年度に引き続き,アングルプライ積層板の非線形力学挙動のモデル高精度化,実験結果を基にしたモデル化を行うが,積層数や層厚の異なる積層板について高精度の予測を与えるか,また,45°以外の角度のアングルプライ積層板についての予測精度について検討し,モデルの高精度化を図る.非線形力学挙動モデル化のための実験手法指針の提示.最終年度に向けて(令和元年度後半)は,モデル化のために必要な試験の指針を取りまとめる.アングルプライ積層板をベースにした場合,必要な積層角度の数,積層数,層厚の目安,試験法の種類(単調引張試験,ひずみ漸増応力緩和試験,ひずみ漸増負荷-除荷試験)と試験片数,損傷定量化のための試験の種類とデータ量について検討する.材料非線形性を活かした積層複合材料構造の提示.最終年度(令和2年度)には,本研究で構築した非線形力学モデルを積層理論またはFEM(有限要素法解析)に組み込み,任意の積層板についての解析を可能とし,例えば,衝撃エネルギー吸収部材を想定した積層構造の設計を試み,新規複合材料構造の提案につなげる.
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Causes of Carryover |
平成30年度は材料費が想定よりも少額となった.これは,実験条件の決定に若干時間を要したことによる.その分,次年度は実験を増やして行う必要があり,次年度には材料費を9万円程度増やして使用する.
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Research Products
(1 results)