2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K03856
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
伊藤 寛明 近畿大学, 工学部, 講師 (70534981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱粘弾性特性 / 粘度測定 / ガラス組成 / クリープ試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラス製非球面レンズ等の光学デバイスをガラスモールド成形によって製造する際に必要となるガラスの熱粘弾性特性を,短時間かつ高精度に取得することを目的とする.従来から実施している一軸圧縮クリープ試験は,熱粘弾性特性の同定精度は高いものの測定に長時間を要するといった課題がある.そこで,クリープ試験によってガラスの化学組成と応力緩和挙動(マスターカーブ)との関係性を明らかにするとともに,ガラスの粘度とシフトファクタとの関連付けに取り組んだ. 具体的には,複数の市販光学ガラス(ホウ酸系ガラスおよびリン酸系ガラス)の圧縮クリープ試験を行い,緩和せん断弾性係数に及ぼす化学組成(ネットワーク構造)の影響を調査した.その結果,瞬間剛性率で除することで無次元化した緩和せん断弾性係数,つまり応力緩和挙動は化学組成の影響をほとんど受けず,同一形状のマスターカーブを描くことを明らかにした.この結果は,圧縮試験などによってガラスの瞬間弾性率を求めるだけで様々なガラスのマスターカーブを容易に求めることが可能となることを示唆していると考えられる.一方で,同一の粘度を示す温度でのマスターカーブを比較したところ化学組成による影響がわずかに確認でき,リン酸系ガラスの緩和時間が長時間側になることが確認できた. シフトファクタの短時間での評価を可能とするため,ガラスの粘度測定に取り組み,今年度は測定原理が従来のクリープ試験と同様である平行平板法を採用した.算出された粘度は60%程度のひずみ領域までの範囲であれば同一の粘度を示すこと,また,従来のクリープ試験とほぼ同一のシフトファクタの同定が可能であることを明らかにした.クリープ試験では70%程度の大ひずみ領域まで実験を行う必要があるのに対して,粘度測定の場合には10%程度のひずみ領域までの計測で十分であり,測定時間を極めて大幅に短縮することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学組成(ネットワーク構造)の異なる複数のガラスに対してクリープ試験を行い,マスターカーブに及ぼす影響を評価できることを明らかにした.また,粘度測定によるシフトファクタの評価時間の短縮にも成功していることから,概ね当初の計画通りに進捗していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ガラスの応力緩和挙動(緩和せん断弾性係数のマスターカーブ)はネットワーク構造の影響をほとんど受けず,同一形状のマスターカーブの概形を示したが,この事実が他のネットワーク構造から成る市販光学ガラスに対しても成立するかどうかを継続して評価する.また,応力緩和時間と化学組成の関係性についても引き続き調査を行いデータの拡充に努める. 粘度測定に関しては,粘度算出式の多くは応力ではなく荷重で定義されていることから,粘度は測定荷重もしくはひずみ速度の影響を受ける可能性がある.今年度実施した平行平板法は概ね実際のガラスモールド成形と近い荷重域(392N)での試験であるが,例えば熱機械分析装置を用いて同様に平行平板法試験を試みようとする場合には,負荷荷重が極めて小さくなる.よって,測定荷重とシフトファクタの関係性について詳細に調査を行う. さらに,得られたガラスの熱粘弾性特性を考慮した有限要素法解析を実施するための環境構築を行い,結果の妥当性を評価する予定である.
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Research Products
(3 results)