2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ組織を有する機能材料の水素脆化メカニズム解明とその抑制方法の開発
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18K03862
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 憲治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20357718)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / 水素脆化 / 水素拡散 / 転位 / 水素化物 / ナノ多結晶 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素を含まないパラジウム単結晶および水素濃度が0.1から0.7までのパラジウム-水素系に対して引張り荷重を負荷する分子動力学シミュレーションを行った。応力ひずみ線図を比較すると、水素濃度の違いによる顕著な差異がみられた。水素濃度が0.1のとき(α相)は水素を含まない系と同じような傾向を有していた。すなわち、弾性変形のあと急落し弾塑性変形に遷移した。その後はジグザクの曲線となった。水素濃度が0.5のとき(α相とβ相の共存状態)は、わずかな弾性変形を示した後はほぼ一定であった。最大応力は水素濃度が0.1のときと比較して著しく小さく1/10程度であった。水素濃度が0.7のとき(β相)は0.1のときと同じような傾向であったが、最大応力は0.1のときより小さくなった。次に、それぞれの水素濃度において生成した結晶欠陥について調べた。水素濃度が0.1のとき、塑性変形は主としてショックレーの部分転位によって生じることがわかった。水素濃度が0.5のときは、引張りを負荷する前の状態においても多数の部分転位が存在した。これはα相とβ相の界面に生成した界面転位と考えられる。この界面転位を起点として塑性変形が進んだために、水素濃度が0.1のときと異なる応力ひずみ線図が得られたものと考えられる。最終状態において生成した転位数は水素濃度が0.1のときの10倍以上であった。以上より、α相はβ相より引張強度が大きく、α相とβ相の2相共存状態は初期界面転位の存在により著しく引張強度が低下すると結論づけられる。さらに、ナノ多結晶バルク材を作成し、緩和計算後の水素化物の状態を観察した。水素は系内に一様に分散し、α相とβ相の2相共存状態は形成されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にしたがった研究を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はナノ多結晶の引張りシミュレーションを行い、その引張強度におよぼす水素の影響を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議での発表のための外国出張旅費を他の研究費から支出したため残金が生じた。研究を促進するために、私たちが所属する研究所が所有するクラウド型共用計算機システムの利用料に前年度の残金を活用する。
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