2018 Fiscal Year Research-status Report
Damage modeling for joining parts of power module
Project/Area Number |
18K03863
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Research Institution | 北九州市環境エレクトロニクス研究所 |
Principal Investigator |
宮崎 則幸 北九州市環境エレクトロニクス研究所, パワーエレクトロニクス信頼性研究室, 主席研究員 (10166150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パワーモジュール / 高信頼性 / 長寿命化 / 損傷モデル / ワイヤボンド部 / 熱疲労寿命 / 非線形ひずみ密度範囲 / 非線形破壊力学パラメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
パワーデバイスは電力制御に用いられ、各種機器の電力低損失化に寄与する省エネのためのキーデバイスである。本研究では、パワーモジュールの高信頼性・長寿命化に向けた研究として、Wire-liftoff現象という熱応力負荷によるワイヤボンド部とはんだ接合部の損傷を研究対象とする。 平成30年度は以下のような研究を実施した。ワイヤボンド部について、SiC、GaNを用いたパワーデバイスを念頭においた高温使用状態 (200~300°C)における材料非線形性を適切に評価し得る損傷パラメータを解析により検討し、損傷モデルを構築した。これまでの既往の研究では、Wire-liftoffの熱疲労寿命Nfは温度範囲ΔTあるいは非線形ひずみ範囲Δεinを用いて整理されてきたが、高温度域ではワイヤの弾塑性変形およびクリープ変形による応力緩和現象が熱疲労寿命に大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで、これらの影響を考慮できる損傷パラメータとしてΔWin(非線形ひずみ密度範囲)とΔT*(経路独立積分の一種である非線形破壊力学パラメータT*の範囲)について検討した。後者のΔT*範囲は研究代表者の独自の提案ある。既往の実験研究ではアルミワイヤのWire-liftoffは200°Cを超える高温度域ではNfが飽和する現象が報告されているが、損傷パラメータΔTあるいはΔεinではこのような現象を表すことはできず、ΔWinでは飽和現象を表すことはできるが、その計算方法に任意性が存在することがわかった。一方、ΔT*については経路独立性を有するために計算方法に任意性がなく、かつNfの飽和現象も表すことができることがわかった。 さらに実際に用いられているアルミワイヤについて、弾塑性特性およびクリープ特性を求めるための実験を行なった。また、熱疲労試験を代換するための機械的疲労試験に用いいる実験装置を設計・製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に実施したワイヤボンド部のWire-liftoff現象の損傷モデルに関する研究については、今回、研究代表者が提案したΔT*という非線形破壊力学パラメータに基づいた損傷パラメータが高温度域でのWire-liftoff現象の熱疲労寿命を定性的によく表すことができるという成果を得て、今後の研究展開の方向性が得られた。 損傷モデル構築に際して長時間の実験時間を要する熱疲労試験データが必要になるが、これを短時間で実験可能な変位制御型疲労試験で代換すための機械的疲労試験をその構成部品を購入して製作し、平成31年度に機械的疲労試験が実施可能な状態になった。また、そのための試験片についても準備した。 Wire-liftoff解析に使用するアルミワイヤの弾塑性特性およびクリープ特性に関する材料試験については、その試験法について試行錯誤を重ねたが有効な実験データを得るにいたらず、平成31年度に持ち越した。
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Strategy for Future Research Activity |
アルミワイヤの弾塑性特性およびクリープ特性に関する材料試験については、応力緩和試験あるいはひずみ速度を変えた引張試験から求めようとしたが、ワイヤが400μmと細く、ワイヤの掴み部の滑りの問題などの技術的な理由により有効なデータが得られていない。そこで平成31年度は死荷重負荷によるクリープ試験により遷移クリープ域および定常クリープ域のクリープ構成式を得ることをめざす。 パワーデバイスと基板を接合する接合材料(ダイアタッチメント材料)については既往の研究を調査することにより、200~300°Cの高温度域においてどのような材料が用いられれる可能性があるかを検討した。現状では銀ナノ粒子焼結体が有力ではあるといわれているが、銀という高価な材料を使用していることおよび多孔性材料であることにより生じるであろう強度信頼性の問題から、ダイアタッチメント材料の主流とはなり得ないであろうと研究代表者は考えている。このような不透明な状況からダイアタッチメント材料についての研究は当面中止し、当面はWire-liftoff現象についての研究に注力して、熱疲労寿命評価手法の確立を目指すことにする。ここで開発される非線形破壊力学パラメータΔT*に基づいた熱疲労疲労寿命評価手法はダイアタッチメント材料の熱疲労寿命評価にも使用可能である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は旅費が当初予定して額よりも少なかったことによる。次年度はより多くの研究成果が出てくることが予想されるので、研究成果発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)