2019 Fiscal Year Research-status Report
電解水(還元/酸化)と磁気援用加工法による複合的表面創製に関する研究
Project/Area Number |
18K03870
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川久保 英樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90579129)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表面改質 / 磁気援用加工 / 電解水 / 残留応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,電解還元水,あるいは電解酸化水を加工液とした表面改質効果について詳細を検討した.加工液の違いによる影響を検討するため,試料を加工液中に浸漬して,送りは与えずに磁気粒子ブラシの回転運動のみで表面加工を行った.加工面の状態から,電解還元水,電解酸化水の両者ともに加工条痕が観察されたが,電解酸化水を用いた方が電解還元水よりも少ない結果となった.この事象は,60分の浸漬加工において電解酸化水の腐食作用によって粒子中のFe成分が溶出し,磁気粒子ブラシの加工能力は徐々に劣化して,除去量が少なくなった可能性がある.電解水を用いた磁気援用加工では,被加工物材質,強磁性材粒子材質,および電解酸化水との化学的特性の組合せが重要になるが,被加工物と加工液である電解水との組み合わせを考慮することで,磁気粒子ブラシによる物理的な除去加工と,加工液による化学的な除去加工との複合的な表面加工技術として利用できる可能性を示した. 特に,電解還元水を用いた磁気援用加工では,平面加工による基礎的加工特性を検討した.更に,軸傾斜加工法,およびパイプ内面への適用を試み,その有用性を示した.圧縮残留応力の付与に関する要素技術として得られた知見は次のとおりである.(1)球形粒子では,バニシ作用が支配的な加工であり,粒子サイズの増大により圧縮残留応力は増加する.(2)不定形粒子では,除去加工とバニシ作用が混在した加工であり,粒子サイズの増大により圧縮残留応力は増加する.(3)圧縮残留応力付与深さを大きくする場合には,不定形粒子よりも球形粒子が適している.(4)軸傾斜加工法を提案し,軸傾斜0°の場合と比較して,圧縮残留応力値が約1.4倍に増加すること,および均一な粗面化加工に有効である.(5)パイプ内面加工への圧縮残留応力の付与加工に有効である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,電解還元水,あるいは電解酸化水を加工液とした表面改質加工を行い,加工液の違いによる影響を検討した.特に,電解還元水を用いた磁気援用加工では,平面加工による基礎的加工特性の詳細を明らかにした.さらに応用技術として,パイプ内面加工への適用事例を示した.また,新たな加工方法として変動磁場の併用を検討している.実験装置の試作を行い,現在,実験中である.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,電解還元水,あるいは電解酸化水を加工液とした表面改質加工を行い,加工液の違いによる基礎的な加工特性を検討してきた.次年度は,電解水(還元水/酸化水)の化学的作用に加え,従来の定電流磁場に対して新たに変動磁場による磁気援用加工を試み,凹凸面の表面加工,およびパイプ内面加工・曲がり管内面加工への適用を行う. 具体的には,以下の項目を検討し,加工特性と加工メカニズムを明らかにする.(1)表面改質効果(圧縮残留応力の付与,粗面化加工),(2)異種成分の移着加工,(3)部分的・選択的加工
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Causes of Carryover |
(1)次年度使用額が生じた理由:2019年度に砥粒加工学会誌へ投稿した学術論文が,2月下旬に掲載可となった.当初計画では,2019年度中に掲載料の支払いを行う予定であったが,掲載が2020年度になるため,掲載料の支払いも2020年度となる(約10万円).また,3月の学会発表が,新型コロナの影響により中止となったため,次年度使用額が生じた(約10万円). (2)使用計画:①砥粒加工学会誌論文掲載料(約10万円),②実験装置の試作,試料購入(ステンレス鋼,炭素鋼,Al合金,Cu合金など:約10万円).
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