2019 Fiscal Year Research-status Report
微視的変形機構を考慮したマルチスケール数値材料試験による一般化材料モデルの構築
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18K03881
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大家 哲朗 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (10410846)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成形シミュレーション / 材料モデル / 結晶塑性 / 加工硬化曲線 / 数値材料試験 / 任意負荷経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度(計画2年目)は,計画初年度からの課題である(1)任意負荷経路に対応できる加工硬化モデルの構築と,(2)数値材料試験法の確立の2課題に加え,(3)初年度に導入した試験装置を用いた材料試験システムの構築に取り組んだ。以下にその概要を示す。 (1) 任意負荷経路を表現できる加工硬化モデルの基本部分は初年度において完成している。本年度はパラメトリックスタディを行い,反転負荷時の加工硬化曲線に及ぼす微視的パラメータ(バックラッシひずみ)の影響を明らかにした。すなわち,反転負荷時の加工硬化曲線の平行移動量を正確に取得できれば,バウシンガ曲線の予測精度も上がることがわかった。 (2) 面心立方格子(FCC)材料に対する結晶塑性解析手法は確立しており,前年度までにその数値材料試験手法も実装してテスト済みである。本年度はさらにその適用範囲を拡大するために,体心立方格子(BCC)材料と六方最密充填構造(HCP)材料への適用に着手した。これらは提案手法をより実用的にするために必要な展開である。先行研究等を参考に我々のシステムを拡張し,シミュレーション可能な状態まで進めることができ,文献値との比較で良好な結果を示した。 (3) 初年度に導入した万能試験機を活用すべく,種々の変形様式を扱えるような金型の設計および3D-DICを用いた逆解析も含めた計測システムの構築を行い,数種類の金属材料(軟鋼,アルミニウム合金,マグネシウム合金)による実測試験まで行った。引張り,圧縮,せん断変形時の流動曲線を正確に取得できることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度(計画2年目)は計画初年度に引き続き,提案モデルの基礎的検討と実験環境の構築に取り組んだ。まず,提案モデルの基礎的検討であるが,概要の欄で説明したように,いずれの課題も概ね順調に進展した。特に,バウシンガ効果(反転負荷)と交差硬化(直交負荷)を両極端とした任意負荷経路を表現できる加工硬化モデルに関しては,提案モデルの有効性を文献値との比較によって示すことができており,これは計画通りの進捗である。数値材料試験法の構築に関しては,FCC材料に対しては確立しているが,BCCおよびHCP材料に関しては実装およびテストは行なったがまだ十分に検証されているとは言えないという段階である。また,これらは結晶塑性モデルであるが,より実用的には巨視的な現象論モデルと連携させる必要がある。現象論モデルに関しては我々の提案モデルはすでに構築ずみであるが,連携部分がまだ確立していない。このように,提案モデルの理論およびシミュレーションによる検討は概ね順調であるが,最終年度に向けた課題も明らかになっている。次に,実験面に関してであるが,概要欄で説明したように,基本的なシステムは完成している。今後は実験の追加,繰り返し負荷実験の実施,成形限界評価への適用などを行う必要があるが,実験面も概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 提案モデルの理論的検討 残された課題のうち重要なものは,ミクロスケールとマクロスケールの連携部分である。本課題においては結晶塑性モデルを用いた検討を行なってきたが,そこではテイラーモデルと呼ばれる微視-巨視連携モデルが用いられている。これまでの検討により,従来のテイラーモデルでは定数として扱われているテイラー因子をテンソル化する必要性が見えてきており,この問題を解決したいと考えている。 (2) 数値材料試験法 すべての構造材料(FCC・BCC・HCP)を単一のフレームワークで扱えるように,システムを拡張および検証する。文献値および独自の実験値を用い,従来手法との比較検証を進める。また,項目(1)に必要な微視的パラメータの決定に関する検討も行う。 (3) 実験システムの構築 実験データを増やして信頼性を高めつつ,非効率な点を見直して実験システムを改善する。特に,実験データと解析データを統合した逆解析による未知量推定手法には改善すべき点が多く,十分な検討を行う必要がある。また,せん断変形による繰り返し負荷実験が未実施なので,最終年度中の実施を目指す。
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