2019 Fiscal Year Research-status Report
表面改質・熱処理による鋼の超精密ダイヤモンド切削における被削性改善技術の確立
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18K03887
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80511716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 智実 関西大学, システム理工学部, 教授 (10268310)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超精密切削 / ダイヤモンド工具 / 摩耗抑制 / 鋼 / 表面改質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,工具摩耗が著しいことで知られる鉄系材料を研究対象として,工具摩耗抑制機構を解明することで,より実用的加工に対する指針を明らかにすることである.本研究では,工具摩耗抑制効果が異なる複数の表面改質した鋼の分析を行う.具体的には,浸炭した鋼材に対してFe3C,Cr23C6等の炭化物を定量分析し,窒化した鋼材についてもFe4N,CrN等の窒化物を定量分析することで,析出物が被削性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 今年度は,ステンレス鋼SUS430に対して,熱処理を施した後に窒化した鋼材に対しダイヤモンド切削を行い、コーナ摩耗幅、境界摩耗幅を調べた。切削距離とコーナ摩耗幅の関係は250m付近から定常摩耗状態となった.一方、前切れ刃境界摩耗幅は切削距離とともに増加し、最終的にコーナ摩耗幅よりも大きくなった。 前切れ刃境界摩耗は仕上面性状に悪影響を与えるため、原因を明らかとする必要がある。そこで、摩耗メカニズムを熱力学的摩耗の観点から以下の反応((1)Fe酸化物とダイヤモンドとの反応,(2)FeおよびFe窒化物と酸素との反応,(3)Cr酸化物とダイヤモンドとの反応,(4)Cr窒化物と酸素との反応)について調査した。その結果,以下のことが明らかとなった.(1)ダイヤモンドと酸化鉄は高温で酸化還元反応を起こすため,加工中に高温となる境界部で摩耗が生じうる.(2)鋼中のCr炭化物から変化したCrN及びCr2O3は切削温度域でダイヤモンドと反応せず,工具を摩耗させない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面改質した鋼の超精密切削における工具摩耗について実験的および熱力学的観点から調査を行い,窒化したステンレス鋼において(1)Fe酸化物とダイヤモンドとの反応,(2)FeおよびFe窒化物と酸素との反応,(3)Cr酸化物とダイヤモンドとの反応,(4)Cr窒化物と酸素との反応を調べることで,仕上面性状に悪影響を及ぼす前切れ刃境界摩耗の要因を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の熱力学的観点からの調査を行うことで,窒化したステンレス鋼だけではなく,浸炭処理を施した鋼材においても工具摩耗と析出物との関係を明らかにすることができると考えられる.また,浸炭処理を施した鋼材において,工具摩耗を抑制するミクロ組織((1)微細な炭化物の析出が多く見られる.(2)粒界に析出する炭化物は面積が小さく,円形度が低い.(3)炭素濃度が高い.)の作製を試み,被削性改善効果を評価する. 一方,窒化処理を施した鋼材においても工具摩耗を抑制するミクロ組織の作製を試み,被削性改善効果を評価する.
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Causes of Carryover |
今年度は既存の鋼材の超精密切削試験,ミクロ組織観察および熱力学解析を中心に行った.そのため,新規の鋼材の熱処理および表面改質に関する費用および実験補助に対する謝金が当初予定していたよりも少なかった. 次年度は,新規の鋼材の熱処理および表面改質に関する費用および実験補助に対する謝金が必要となるため,翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する予定である.
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Research Products
(4 results)