2018 Fiscal Year Research-status Report
自動車の室内空間がドライバーの運転余裕に与える影響の定量化
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18K03898
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
茅原 崇徳 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (00582967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人間工学 / 設計工学 / 運転余裕 / メンタルワークロード / ドライビングシミュレータ / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生体信号を用いて自動車運転時の運転余裕を定量化し,運転しやすい車室空間を設計するための指標を提案することを目的としている.本年度は,情報処理を行うための負担(メンタルワークロード;MWL)を変化させて,ドライビングシミュレータ(DS)を使用した運転タスク中の眼球・頭部運動を計測する実験と,バーチャルリアリティ(VR)を用いて異なる車室空間を提示した際の広さ感を計測する実験を行った. DSを用いた眼球・頭部運動の計測実験の実験参加者は,普通自動車免許を有する男子学生3名であった.主課題はDSによる約5分間の運転課題であり,MWLをコントロールするための副次課題として,連続して読み上げられる数字のN個前の数字を口頭で回答し続けるN-back課題を課した.N-back課題は0-back,1-back,2-backの3水準とし,コントロール条件としてN-back課題無しの条件を加えた.総条件数は4条件であった.実験の結果,副次課題の難化に伴い,水平方向の視線角度の標準偏差が減少することや,視線の移動量に対する頭部の移動量の割合が増加することを確認した.このように,眼球運動や眼球・頭部運動の協調関係を使用することでMWLの推定が可能であることが示唆された. VRを用いた広さ感の計測実験の実験参加者は学生12名(男性6名,女性6名)であった.現行車のルーフの高さとフロントガラスの領域を変化させて,広さ感を7段階で評価させた.実験の結果,ルーフ高さが高く,フロントガラスの領域が広くなるほど車室空間を広く感じるが,ルーフ高さが高くなるとフロントガラスの領域を広くしても主観的な広さが変化しないことを確認した.また,ルーフ高さが広さ感に与える影響の方が,フロントガラス領域の拡大の影響よりも強いことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,DSと画像センサを用いて運転タスク実施時の眼球・頭部運動を計測する実験システムを構築し,構築したシステムを用いて実験を実施することができた.実験の結果から,コントロールしたMWLの変化と関係のある眼球・頭部運動のパラメータを選定することができた.選定した眼球・頭部運動のパラメータを用いることで,MWLの推定が可能になると考えている.ただし,本年度の眼球・頭部運動計測実験は実験参加者数が少ない予備的な検討であったため,次年度に実験参加者数を増やして結果の信頼性を高める予定である. また,眼球・頭部運動計測実験と並行して,VRを使った車室空間の変更時の広さ感の計測実験を実施し,広さ感に影響を与える設計因子について検討することができた.この結果は,次年度以降に計画している車室空間と運転余裕の関係の検討を行う上での基礎となるデータである. 以上のように,計画していた実験をおおむね完了するこができ,また一部計画に先行して実験を実施した.次年度以降の研究計画につながる結果がえられたことから,研究はおおむね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,以下の研究計画を実施する. 1)眼球・頭部運動パラメータによる運転余裕の定式化:今年度に実施してDS運転時の眼球・頭部運動の予備的な計測実験の結果を踏まえ,実験参加者数と副次課題の水準数を増やしてより詳細な実験を行う.計測結果に機械学習を適用し,眼球・頭部運動と運転余裕の関係を定式化する. 2)走行環境が運転余裕に与える影響の検討:交通量や右左折の頻度などの走行環境は運転者の情報処理負担に影響を与えると予想される.そこで,走行環境を変化させて眼球・頭部運動を計測し,走行環境が運転余裕に与える影響を定量的に評価する. 3)車室空間が運転余裕に与える影響の検討:ルーフの高さやAピラーの形状などの車室空間の設計因子を変化させて運転時の眼球・頭部運動を計測し,車室空間の設計因子と運転余裕との関係を定量化する.また,ドライバーの特性や走行環境に応じた運転しやすい室内空間の設計について検討する.
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Research Products
(1 results)