2018 Fiscal Year Research-status Report
DLC膜の疲労強度に及ぼす膜内特性分布の影響解明-“超”寿命領域を目指して-
Project/Area Number |
18K03906
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 守正 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (00464230)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | DLC / 強度 / ラマン / 物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
DLC膜の高疲労強度化を目指し,10の7乗回の負荷回数でも損傷しにくいDLC膜を被覆するための指針を得ることを目的として,DLC膜における力学的特性および物性の分布の調査を行った.さらに,研究代表者が開発した既存の繰返し押付け試験装置をさらに高速化した,ボルト締めランジュバン型超音波振動子を用いたギガサイクル表面疲労強度評価装置を設計,製作し,運転した.また,運転時に発生した各種トラブルの対処を行った. 当初計画として,2018年度は同じ一つのDLC膜に力学的特性や物性がどのように分布しているかを明らかにするため,DLC膜に対する複数箇所へのナノインデンテーション試験,ラマン分光分析等を行い,膜構造,力学的特性の分布を調査した.ナノインデンテーション試験は現在継続中である.他,ラマン分光分析を行った結果,DisorderピークとGraphiticピークの強度比(I(D)/I(G))やGraphiticピークのシフトなどといったラマンパラメータには,測定位置でばらつきがあることがわかった.ただ,現在までに得たデータから,分布があるというよりはむしろランダムにばらついている印象があった. 一方,DLC膜強度評価のためのギガサイクル表面疲労強度評価装置については,発生したトラブルを解決しつつあり,装置は概ね完成状態にある.また,この装置を用いた試験手順についても概ね構築できた. さらに,所属機関に導入したプラズマCVD型DLC膜形成装置の立ち上げは予定通り完了し,この装置を用いてDLC膜の形成を行った.形成したDLC膜はラマン分光分析の結果,特有の典型的なラマンスペクトルを有することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初の2018年度研究計画として,同じある一種類のDLC膜において,力学的特性や物性がどのように分布しているかを明らかにするため,DLC膜に対する複数箇所へのナノインデンテーション試験,ラマン分光分析等を行い,膜構造,力学的特性の分布を調査した.まず,ナノインデンテーション試験は現在継続中であるがこれまでの結果,基板バイアス電圧0Vで形成したDLC膜において,最高18.8,最低12.8GPa,-200Vで形成したものについては最高48.6,最低29.9GPaの範囲でばらつくことがわかった.一方,ラマン分光分析を行った結果,DisorderピークとGraphiticピークの強度比(I(D)/I(G))やGraphiticピークのシフト等といったラマンパラメータに,測定位置によるばらつきがあることがわかった.ただ,現在までに得たデータから,分布があるというよりランダムにばらついている印象がある.このことから,このようなランダムな物性のばらつきが生じる要因について検討する必要があると考えている. 一方,DLC膜強度評価のためのギガサイクル表面疲労強度評価装置については,発生した数多くのトラブルを解決しつつあり,概ね完成状態にある.また,この装置を用いた試験手順についても概ね構築できており,実際にDLC膜を評価を開始している. また,DLC膜の形成装置については,これまで大阪産業技術研究所所有のUBMスパッタ装置を専ら使用してきたが,所属機関に導入したプラズマCVD型DLC膜形成装置の立ち上げが完了し,DLC膜形成が可能なことも確認した.したがって,PVD法,CVD法の両方を用いてDLC膜を形成できることになり,これまでよりも多種類のDLC膜を実験に供することができるようになった.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究開始当初の2019年度研究計画として,種々のDLC膜に対するギガサイクル表面疲労強度評価の実施,損傷モードの把握と,DLC膜の力学的特性,物性の分布を調査し,それらの因果関係を解明することである.2018年度にプラズマCVD型DLC膜形成装置の立ち上げを完了したので,これまで用いてきたUBMスパッタ法に加えてプラズマCVD法でもDLC膜を形成できるようになり,PVD,CVDの両方を用いて形成した多種のDLC膜についての調査を実施する.また,これらのDLC膜を疲労強度試験に供する.さらに,形成したDLC膜の力学的特性と物性を,ラマン分光分析やナノインデンテーション試験,その他種々の表面分析法を用いて調査し,疲労強度と力学特性や物性の因果関係の解明に努める.
|