2018 Fiscal Year Research-status Report
水和構造と表面微細構造の制御によるハイドロゲルの低摩擦・低摩耗化
Project/Area Number |
18K03911
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鎗光 清道 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (90723205)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 摩擦 / 摩耗 / 速度依存性 / 荷重依存性 / 透水率 |
Outline of Annual Research Achievements |
i) 低透水性ハイドロゲルの創製 PVAハイドロゲルは繰り返し凍結解凍(FT)法およびキャストドライ(CD)法を用いゲル内の微結晶構造とその分布を制御することにより、透水率を10-13~10-15 m4/Nsの広範囲で制御可能であることが明らかになっていた。本年度の研究では、より低透水率なゲルが得られる高温乾燥処理を作製工程に取り入れた、FT-CDゲルを単層ゲル中で複合化したハイブリッドゲルを作製した。その結果、従来の二層積層型ハイブリッドゲルと同等の含水量を有しつつ、より低透水性のゲルを得ることに成功し、さらに高接触面圧下でも低摩耗を維持可能なゲルの開発に成功した。 ii) 低透水性ハイドロゲルの摩擦特性評価 本年度作製した単層複合型PVAハイブリッドゲルの摩擦特性について、摩擦速度、潤滑液年度および接触荷重への依存性を調査した。その結果,単層複合型PVAハイブリッドゲルは摩擦速度、潤滑液粘度および荷重への摩擦係数の依存性が極めて小さく、かつ低摩擦を示すことが明らかになった。従来のCDゲルおよび二層積層型ハイブリッドゲルも摩擦速度、潤滑液粘度、荷重への摩擦係数の依存性は小さかったものの、i)に示した通り、高接触面圧下の耐摩耗性を加味すると、歩行運動中に接触荷重や摩擦速度が大きく変化する関節摺動面における人工関節軟骨としての使用を考慮した場合、単層複合型ハイブリッドゲルは人工関節軟骨としての応用の可能性を有した材料であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としていた、i)従来のゲルと同等の高含水率(>70%)を有しつつ低透水性のゲルの得ること、ii)新規ゲルの摩擦速度、潤滑液粘度、荷重依存性の検討は予定通り実施され、人工関節軟骨としての有用性を示す結果を得ることに成功していることから、計画はおおむね順調に進展していると判断される。 ただし、本年度の検討では単層複合型ハイブリッドゲルの作製プロトコルの最適化がなされたかについては検討の余地を残すものになっているため、この点については次年度以降も引き続き検討を続ける予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究にて作製した単層複合型ハイブリッドゲルを対象に、引き続き低摩擦・低摩耗化のための最適プロトコルの策定を継続するとともに、再表面の水和構造に着目し、その最適化を目指す。具体的には、すでに考案している、ゲルからのPVA分子の溶出現象を用いて最表面からPVA分子を突出させ、ゲル化環境の温湿度制御を組み合わせることにより低摩擦・低摩耗水和構造を形成する手法を適用し、低摩擦・低摩耗化のための最適水和構造の構築を目指す。また、原子間力顕微鏡を用いた最表面水和構造の厚みの推定や摩擦・粘弾性測定を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の必要経費を執行した結果、わずかな額であるが残分が生じており、本金額は次年度使用ではなく返納を行う。
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