2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of aerodynamic bearings supported by elastic structure with snap-through buckling for high speed turbomachines
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18K03920
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
杣谷 啓 大同大学, 工学部, 准教授 (70581429)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 弾性支持 / 動的特性 / 飛越座屈 / 動圧空気軸受 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙機器用途の超小型・超高速ターボ機械への応用が期待される軸受として、空気を潤滑流体として用いた空気軸受が注目されている。その中でも超高速で回転するタービンを安定して支えることができる弾性支持型の空気軸受は各国で活発に研究が進められている。弾性支持型の空気軸受は軸受部をゴムや板バネで構成される弾性構造体で支えることで空気膜の弾性とあわせて連成振動系を構成し、高速回転時の振れ回りを抑えることができる。しかし従来の弾性構造では温度変化や極めて強い衝撃・振動によって支持特性が変化し易く、過酷な環境で要求性能を満たすことが困難であると予想される。そこで本研究では、温度変化や衝撃に強い弾性支持構造として飛越座屈現象を利用した弾性構造体に注目し、超高速対応型空気軸受用弾性支持体として用いることを提案した。この弾性支持構造は湾曲した梁を重ね合わせた多層構造となっており、湾曲した梁は横荷重に対して飛越座屈現象が現れるようにパラメータを調整している。このような湾曲した梁の変位-負荷特性は、荷重増加時と減少時で経路が大きく異なるため減衰容量が大きく、これを多層化にすることにより優れた減衰能が期待できる。2018年度では、提案する弾性構造体の構造特性を実験的に明らかとするために弾性構造体の基本要素である湾曲した二重梁を実際に製作し、周波数応答試験を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。(1)本研究で製作した飛越座屈現象を利用した弾性支持構造では,飛越座屈が起きる領域内で振動する場合にのみヒステリシスを示す。(2)飛越座屈現象を利用した弾性支持構造の周波数に対する動特性の変化は要素間摩擦によって減衰を獲得する従来構造と同様の傾向を示す。(3)飛越座屈現象を利用した弾性支持構造は軸受用弾性支持構造としては十分使用可能な動的特性を有している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は「①飛越座屈現象を利用した弾性構造体の各種パラメータの数値的検討」、「②周波数応答特性の実験的検討」について検討を行った。 ①本研究で用いる弾性支持構造を軸受支持として用いるためには飛越座屈の変位量を十数μmまで抑えなければならない。これまでの構造では座屈による変位量を0.1mm以下となるパラメータで製作することが非常に困難であり、新しい構造を模索する必要がでてきた。そのため今年度は、非線形有限要素解析により変位量が極小となる構造および各種パラメータについて検討した。現在30μmまで飛越座屈の変位量を抑えることが可能な構造を見出しており,引き続き数値計算による構造の検討を行うことで目標値を達成できるようパラメータスタディを進めていく予定である。想定よりも早く新規構造を開発できたため、順調に進行していると考えている。 ②弾性構造体の基本要素である湾曲した二重梁を実際に製作し、加振周波数50~150Hz,振幅±25~140μmで周波数応答試験を行った。ここでは、正弦曲線状に曲げられた0.1mmのステンレス薄板二枚と土台を抵抗スポット溶接により固定することで二重梁を製作している。周波数応答試験の結果、提案する弾性構造体は空気軸受の弾性支持として十分使用可能な動的特性を有するであろうことが確認できた。周波数応答試験の実施は2019年度を想定していたため、本実験は順調に進行していると考えている。現在は弾性構造体の製作を進めており、製作完了後に構造体全体での周波数応答特性を明らかにしていく。 そのほか、弾性構造体を用いた弾性支持軸受の高速安定性計算についてプログラムを完成させ、一通りのパラメータチェックを行った。先に述べた弾性構造体の周波数応答特性が明らかとなった後に本計算プログラムを用いて高速安定性の計算を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、弾性構造体の製作方法についてアディティブ加工をはじめとした製造法について検討中である。提案する弾性構造体は高い精度(~0.01mm)を要求するために、金属を用いたアディティブ加工を適用することが難しく、新しい構造を模索する必要がある。そのため、低精度でも要求性能を満たす新規構造の模索と同時に他の高精度加工法を用いた弾性構造体の製作試験も同時並行で行う。これにより、研究の進展が想定を超えて遅れる可能性を低く抑えることができる。本工程は既に進行中であり、2019年度前半には完了する見込みである。 製作中の弾性構造体が完成次第、弾性構造体の基本特性である変位-負荷特性や周波数応答特性を実験的に明らかとする。これによって得られた動的特性(動剛性・減衰係数)を用いて提案する弾性支持軸受の高速安定性を数値的に求める。これらの装置および計算プログラムはすでに完成もしくはテスト段階にあるため、本工程で遅延することはないと考える。 また、提案する弾性構造体が衝撃・振動に対して十分な耐久性を有しているかを確認するため、に衝撃耐久性の実験的評価が必要である。次年度は磁歪アクチュエータを用いた加振機による弾性構造体用の衝撃耐久試験装置の設計と製作を行い、測定精度の確認までを行う。本実験装置の仕様や各部品の選定は進行中である。
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Causes of Carryover |
(理由)弾性構造体の製作費として計上したが、2018年度に行う予定であった提案する弾性構造体の試作の一部を実施する必要がなくなったことから次年度使用額が生じた。これは数値的検討によって提案する弾性構造体よりも優れた新しい構造体を見出したためである。
(利用計画)繰り越された研究費は、2019年度請求分と合わせて現在進行している新しい弾性構造体の製作費として使用する予定である。
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