2018 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of innovative desktop trace gas concentrator by molecular exchange flow
Project/Area Number |
18K03926
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉元 宏 京都大学, 工学研究科, 講師 (50222055)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 気体膜分離 / 廃熱利用 / MEMS / 同位体分離 / 多孔膜 / 希薄気体 / 熱遷移流 / Knudsenポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 前回科研費(課題番号15K05974)で試作した,デスクトップ混合気体分離装置(多孔膜面積768cm2)を用いた混合気体分離試験を行った.He50%-Ne50%混合気体では,毎分3ccの流量の供給ガスを2分割し,両者の濃度差を50%程度に維持できた. 2つの生産ガスの流量バランスを変更することにより,生成気体の濃度を11%~86%の間で選ぶことも可能である. (2) 本気体分離法の特殊な性質ー希薄(あるいは高純度)気体に対する高い濃縮力ーが確認された.希薄混合ガスの場合,2つの生産ガスの流量バランスを選び,数倍以上の濃度を持つ気体を生成可能であった.高純度気体の場合,不純物の濃度を3.5%から0.2%に減少できた. (3) Ne同位体の濃縮に取り組んだ.理論的には同一装置で任意の混合気体・同位体に効果が期待されるが,実際,試作した装置は無改造でNe同位体が濃縮可能であり,Ne22同位体の存在比を1%以上変更することができた.上記(2)の微量ガスに対する効果は同位体にも該当し,約4倍のNe21の濃度変化も測定された. (4) 上記装置のままでは,得られる濃縮比に上限がある.この問題は,装置構成を(研究申請書記載のものに)変更することで解決できた.多孔膜内部の希薄気流データを用いた数値モデルによる解析を行い,同一形状のサブシステムを多数直列するだけで,際限なく濃縮能力が向上することが示された. (5) 上記(1)-(3)の装置を,(4)で提案した形に再構成し,実際に動作することを確認した.具体的には,同一形状のサブシステムを2台接続することで分離能力が2倍になることを実験で確認した.作成した装置では数十度の温水・冷水の温度差だけをエネルギー源とする改修も完了した.運動部品を全く持たない装置であり,温度等の測定を省けば,無電力で混合気体・同位体の分離が可能であることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 同位体濃縮を始め,簡単な分子の濃縮については順調である.通常の(希薄成分,高純度成分ではない)成分気体に対する濃縮効果は,予想通りである.ただし,希薄成分,高純度成分の高度な濃縮が,流量バランスによって可能なことは予想外であり,非常に有意義な発見である. 2. ホルムアルデヒドの検出など,有機物質に対する革新的レベルの研究には,しかしながら,より効率的に濃度変化量を向上させる必要がある.有機物質に対する実験を拙速に行うよりは,効率的に濃度変化量を増大させ得る手法を確立することが重要であると思われる. 3. 今年度の研究成果を用いれば,従来の装置を1セットにまとめた,「集積濃縮装置」と呼べるものが実現できることがわかる.これは今後の研究の進行を加速するであろう. 以上2と3を考慮して,「おおむね順調」と評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を用いれば,従来の装置を1セットにまとめた,「集積濃縮装置」と呼べる装置の設計を進めている.従来装置では,4台の小ユニットを結合して気体濃縮ユニットが構成できるが,新装置は組み立てなしの単体で同一性能を発揮する.従来の積層構造も継承しており,He-Ne混合気体換算では数百%相当の分離能力が得られるであろう.この能力を用いれば,(1) 各種混合気体から高純度成分ガスを単一プロセスで生成 (2) 同位体ガスの高度濃縮 (3) 大気中のホルムアルデヒド分子などの中間分子量気体の濃縮,などが可能になるだろう. 上記を鑑み,平成31年度には新型装置の作成および中間分子量気体の濃縮の実現を研究することに変更する. ホルムアルデヒドは常温で気体であり,購入を予定していた冷凍機・コンデンサーの経費で新型装置を構成し,研究目的を完成させることにする.
|
Causes of Carryover |
今年度の研究により,同一のサブシステムを多数接続するだけで微量気体の濃縮が実現できることが判明した.これは,本気体分離法の有望な用途が,ホルムアルデヒドなど微量有害成分を濃縮するセンサー,ヘリウム3など有用な同位体の濃縮生産であることを示している.今後2年間で効率よく分離膜の面積を拡大し,これらの実現性を立証する必要がある. この目的のため,現状では4ユニットから構成されているサブシステムを,1ユニットで構成できる集積装置を設計中である.配管作業が不要になるため,ユニットあたりのコスト・組み立て工数が大幅に減少する予定である.この装置は,今年度の予算の一部を利用して次年度に試作・実験を行う.
|