2020 Fiscal Year Research-status Report
格子ボルツマン法を基とした気液界面と音の相互作用の直接計算手法の確立
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18K03930
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片岡 武 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20273758)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子ボルツマン法 / 流体音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度までに行った流速の小さい流れにおける流体音を捉えるための格子ボルツマン法モデルを,さらに流速の速い場合への拡張を実施し,成功した.格子ボルツマン法が音波の伝播を記述する上において非常に優れた解像度を有するのは,解くべき方程式である運動学的方程式が,音波の伝播に最適な形をしているからである.この音波現象に対する適合性をさらに特徴づけるべく,流速の大きな流れへの適用モデルを構築した. この新たなモデルは,前年度までに開発したモデルよりもさらに高速流れに対して適用可能であり,衝撃波のような激しい物理量の変化も適切に計算を実施することができる.ただし,粘性を大きくするとやや不安定な傾向を示すため,この粘性による圧縮性境界層の処理が今後課題となる.また,運動学的方程式では新たに分子速度空間が入るため,計算負荷を減じるためには離散分子速度の数を少なくする必要があるが,これは前年度モデルの13点に対して,19点となり,それほど負荷を増加することなく高速現象を捉えられるモデルとなっている. 本モデルは,空間1,2次元にとどまらず,3次元モデルも開発した.今後,このモデルを粘性の効く流れに対しても有効とすることで,任意の3次元流れにおける流体音を捉えるモデルが開発できる.その基礎となる研究を今年度行った.また,今後気液界面を取り扱うことを鑑みて,密度の異なる流体中の波の伝播様相についての研究も同時に行っている. なお,これらの開発した計算モデルの基礎理論は,曽根に依る理論(Kinetic Theory 2002)に基づいており,従来のLBMがもつ非粘性流れを計算できない,パラメータを自由に設定できない,などの欠点を全て克服したモデルである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気液界面と音の相互作用の直接計算手法の開発のためには,まずは音を解像度よく捉えるための圧縮性モデルを開発することが先決であることを,前年度から述べており,今年度はその最終段階に入った.あとは粘性の効果をどのように安定的に組み込むかである.その後は,気液界面との相互作用をとりこんだモデルへの開発へかじを切る.そういう全体の流れとして,今年度までは順調にステップを踏んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,今年度開発した高速流体音モデルを,粘性の影響を安定的に取り込めるモデルへ改定する.いくつかの手法があるが,まずは分子速度の配置変化による安定性の探索を行い,続いて人工粘性に安定化を図る.その後,本モデルを基礎として,気液界面の運動を直接計算するためのモデルを開発する予定である.ファンデルワールス力を基礎とした方法と2流体モデルの両方法を試す予定である.なお,1番の問題は大きな密度比であり空気,水の場合800倍程度の密度比があるため,現段階では二流体モデルを使用する可能性が高い.この気液界面を記述できる仕組みを,今年度開発した新しいLBMモデルに導入する.
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Research Products
(3 results)