2021 Fiscal Year Research-status Report
格子ボルツマン法を基とした気液界面と音の相互作用の直接計算手法の確立
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18K03930
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片岡 武 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20273758)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数値計算法 / 音波 / 水面波 |
Outline of Annual Research Achievements |
エオルス音やエッジトーンなど、純粋な流れと音の相互作用について、より安定的に計算可能なモデルを開発した。流れと音という異なるスケールの物理現象下においても、広いパラメータ範囲で安定的に計算可能なモデルである。本基本モデルをベースに、気液界面の界面張力、液体の圧縮性の要素を組み込んだモデルを開発し,液滴が液面に衝突する際のシミュレーションの結果を得ている。液滴と液面との衝突面で発生した水中音が液滴内および液相内を伝播するとともに,空中にも伝播していく様子が捉えられ,同時に液に細かな気泡が取り込まれることにより,音の放射が2重極的になることも確認できた。 一方,格子ボルツマン法における蒸発,凝縮現象のモデル化は,凝縮相(蒸発,凝縮が起こる面)での気体に対する速度分布関数を,その場所での飽和蒸気圧(実際には密度)に対応する平衡分布関数に置き換えることにより,簡単に達成される。ただ,格子ボルツマン法のモデルは,本来の気体分子の運動を正確に表しているわけではないので,パラメータを適切に選ぶ必要があり,これらの最適なパラメータを見出しす必要がある。現段階では、音波のスケールと液滴スケールの差異によるモデルの不安定性が少しみられる。 そこで、界面の境界条件において、いくつかの過去の計算モデルを導入した。ベンチマークテストを分子気体力学を基礎とした計算結果を示した過去の論文を参考に行い,モデルの妥当性を確認した。気液界面に最も近い気相領域内の格子点において,上記モデルの境界条件(飽和蒸気圧に対応した平衡分布関数)を適用し、安定性が改善することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した基礎モデルは安定的に計算できるため。最終モデルはまだ不安定であるが、今後改良の余地があり、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記モデルに,気液界面からの水蒸気の蒸発・凝縮効果を導入する。気液界面付近の気相側には,分子の平均自由行程のオーダーであるクヌッセン層での物理量(密度,温度,圧力,流速)のとびが生じる。水蒸気の蒸発・凝縮現象,特に凝縮課程において非凝縮気体(今の場合,空気)の存在が大きく影響する。 またマイクロバブル崩壊時のソノルミネセンス(気泡内の圧力が大きく上昇し,光を発する)においては,凝縮気体が液化した後,非凝縮気体が大きな圧縮を受けるためと考えられており,凝縮気体と非凝縮気体の共存が,現象の本質である。この2種類の気体を計算モデルに取り入れるために別の粒子を加え,液相と2種の気体,合計3種類の粒子を考える。凝縮気体には,気液界面の気相側において飽和蒸気圧に対応する平衡分布関数を定義する。一方非凝縮気体に対しては,密度,温度を気相から外挿することにより定義する。これにより非凝縮気体の質量は,気相において保存される。 非凝縮気体の,蒸発・凝縮現象への影響は,いくつかのベンチマークテストを分子気体力学を基礎とした計算結果を示した過去の論文を参考に行い,モデルの妥当性を確認する。蒸発は気液界面で起こるので,気液界面に最も近い気相領域内の格子点において,上記の境界条件(飽和蒸気圧に対応した平衡分布関数)を適用する。液の変形縮小は,局所的に蒸発した水蒸気量から求め,計算に組み込む。これにより蒸発・凝縮による液滴変形を,計算により求め得るモデルとする。この際,液面変形の計算において大きなノイズが生じると,界面と音波の干渉が正確に求められない。蒸発・凝縮による液滴変形のシミュレーション手法構築は,細心の注意を払って行う必要があり,本研究に置ける最も困難な部分である。
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