2018 Fiscal Year Research-status Report
量子乱流と常流体乱流の結合計算による2流体乱流の特性解明
Project/Area Number |
18K03935
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (60317336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪田 誠 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10197759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子乱流 / 超流動ヘリウム / 相互摩擦力 / 2流体結合 / 常流体 / 超流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
極低温の液体ヘリウムは、粘性ゼロの超流体と粘性を持つ常流体が混合した2流体状態にある。その液体ヘリウムで満たされた矩形ダクトの一方をヒーターで熱すると常流体は低温側に、超流体は高温側に移動する。流速が増加すると、超流体中の量子渦が毛玉のようになる量子乱流となり、常流体と相互作用して超流体が流れにくくなる。2015年に米国で行われた実験で、量子渦に次いで、常流体の速度分布の可視化が可能になった。その結果、流速が増加するにつれて常流体は放物形から平坦化した流れ、次いで乱流になることがわかった。そこで、今年度は下記について研究を行った。 流れに乗って渦点が動いていく渦糸計算で解析される量子乱流と固定した計算格子において流れの変形を解析する常流体といった異なる計算系の現象を解析するため、相互摩擦力を介した2流体カップリング計算の実装に成功した。その結果、流速が増加して、渦糸密度が増加すると、相互摩擦力が強くなり、常流体は平坦化した速度分布になることがわかった。その後は、圧力勾配と相互摩擦力が釣り合い、放物形分布に戻ることも明らかになった。この成果は、物理系で著名な雑誌Physical Review Lettersに掲載された。 また、相互摩擦力が存在する実験下では、矩形ダクト入口から一様な分布で流入した常流体が放物形の定常流れになるまでの助走距離が、短くなることが知られている。そこで、超流体も常流体と同じくNavier-Stokes方程式で扱えるように粗視化した方程式により、超流体が相互摩擦力によって変形した状態で常流体の入口へ向かって流れてくるために、一様な分布で流入する常流体は相互摩擦力によって早期に変形を受けることで、助走区間が短くなることがわかった。また超流体の移流項から予見される超流体の乱流粘性を渦粘性として近似することで、管壁の流速分布が平坦化する現象の再現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算の取り合い方の異なる超流体と常流体の2流体結合計算に成功し、1流体のみの変形を扱ってきたこれまでの計算では再現できない現象を再現ならびに解明できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究手法を発展させ、実験では情報が少なく解明できない様々な特異現象を、計算によって解明していく。まずは、量子乱流がさらに高濃度になる場合にも高速に計算ができるようにする。これによって、さらに強い相互摩擦力下での2流体結合計算が可能となり、常流体の非等方な速度変動など、相互摩擦力の局所的な変動について詳細な検討が可能となる。また、常流体も乱流状態で計算できるようにモデル化も含めて平行して検討を進める。
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Causes of Carryover |
国際会議にて有意義な議論ができ、論文化まで行えたため、国内学会参加を実施しなかったために生じた。次年度、さらに進展した研究内容の学会発表を行うために利用する。
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