2019 Fiscal Year Research-status Report
量子乱流と常流体乱流の結合計算による2流体乱流の特性解明
Project/Area Number |
18K03935
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (60317336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪田 誠 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10197759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子乱流 / 数値流体力学 / 超流動ヘリウム / 2流体結合 / 混相流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2.17K以下の極低温の液体ヘリウムは、粘性のない超流体と粘性を有する常流体の混合状態であることが知られている。超流体の循環は量子化され、同じ渦強度をもつスパゲティのような渦糸として存在する。これを量子渦と呼ぶ。このような極低温の液体ヘリウムを正方ダクト内に入れ、そのダクトの一端をヒーターで熱すると、熱輸送に寄与する常流体はヒーター側から他方のダクト端へ移流する。一方、質量保存を満たすように、超流体はヒーター側へ移流する。この熱駆動による反対方向の流れの状況を熱対向流と呼ぶ。 ヒーターからの熱流束が増加すると、相対速度が増加し、超流体の量子渦が毛玉のようなタングル状になり、ランダムに変動する。この状態を量子乱流と呼ぶ。超流体は乱流状態であるが、常流体は乱れていない層流状態をT1状態と呼ぶ。一方、さらに相対速度が増加し、両流体が乱流になった状態をT2状態と呼ぶ。 今年度は、熱対向流の状況下で、渦糸と常流体が相互摩擦力を介して、局所的に相互作用をする2流体同時計算を開発した。これににより、タングル状の渦糸の平均渦糸間隔より小さいスケールの超流体や常流体の変動を解析することが可能となった。その結果、1つの量子渦輪が移流すると渦輪の内外に1対の常流体の渦輪ができること、渦糸の再結合によって、常流体へエネルギーが輸送されることなども再現できるようになった。 また、熱対向流実験におけるT1状態において、常流体の異方的な速度変動が観測されていた。今回開発した計算により、その原因は量子渦が常流体の中を移動する際にできる常流体の速度変動(後流)が原因であり、異方性など実験と整合する結果が得られた。本結果は、物理学分野で最も権威のある雑誌の1つであるPhysical Review Letters誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2流体を相互摩擦力により局所的に結合することに成功し、渦輪や再結合といった素過程の計算が可能となり、さらに複雑なT1状態の解明にも成功したから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらなる計算の高速化を検討する。その結果、両流体が乱流となるT2遷移やT2状態における乱流統計量の検討が可能となる。さらに、実験では理由が不明である様々な流体現象を数値計算を用いて解明をしていく。また、T1状態あるいはT2状態で顕著な素過程に着目し、詳細な物理現象の解明を実施する。
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Causes of Carryover |
当初の計画に追加して、国際会議へ出張するために前倒し申請を行った。その結果、残額が発生し、次年度使用額が生じた。一方、研究が順調に進展し、国際会議へ多く参加し有意義な議論ができた。結果として国際共著論文に発展した。次年度もさらに国際共同研究を推進すべく、学会発表のために利用をする。
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Research Products
(12 results)