2018 Fiscal Year Research-status Report
キャビテーションの弱非線形効果を利用した水中高速音響ソリトンの実現と応用
Project/Area Number |
18K03942
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金川 哲也 筑波大学, システム情報系, 助教 (80726307)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キャビテーション / 衝撃波 / 音響ソリトン / 気泡 / 気泡流 / 弱非線形 / 非線形音響学 / 非線形波動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポンプに代表される水力機器の内部流れにおいて,キャビテーションの発生,そして衝撃波の形成は,しばしば機器の損傷を招く。だからといって,キャビテーションの全てを悪者扱いするのではなく,キャビテーションのメリットのみを有効に利用することは叶わないだろうか。キャビテーションの「弱非線形効果」に着目するとき,衝撃波の音響ソリトンへの変換が可能となる。その波を,機器から高速で放出させることを狙う。 本研究の目的は, この革新的技術の実現に向けた理論的基盤の創成にある。キャビテーション気泡振動の弱い非線形性を積極活用することで,波の散逸性の抑制と波の分散性の卓越が両立できて,音響ソリトンの形成が可能となる。そのために,気泡流中を水中音速1,500 m/s超という超高速で伝播する「高速波」なる斬新な波に着目し, その伝播特性を理論的に予測する。高速音響ソリトンの形成において,本質となるのは,波の散逸性・分散性・非線形性それぞれの大きさの見積もりに他ならない。したがって,非線形波動方程式の導出およびその求解を通して,「高速音響ソリトンはいかなる条件下で形成されるのか?」なる疑問への回答が可能となる。 初年度の成果は以下のように要約される: 1.水中音速を超えて伝播する,超高速・超高周波数の圧力波の弱非線形伝播過程が,非線形Schrodinger方程式で記述されることを示し,その係数を確定させた。 2.高速領域の周波数の大小に応じて,2種類の異なる非線形Schrodinger型の方程式が導出される見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね初年度計画のとおりに研究を遂行できた。一定の困難が予想された非線形波動方程式のうち,1本の導出に成功し,査読付雑誌論文としての公表にも至ったことは,次年度以降の研究遂行のための十分な布石である。さらには,異種の非線形Schrodinger方程式が導かれる見通しも立っている。 また,当初計画には含まれておらず,異なる研究として並行に進めていた,気泡流中の非線形波動に熱の効果と流速の効果が及ぼす影響に関する理論解析結果が,本研究に還元可能な見通しも立った。これらの効果を取り入れるための具体的な解析は次年度に譲るが,理論の適用範囲を拡張することができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,初年度の成果を受けて,最終年度における総括を意識しながら,以下のとおりに進める予定である: 1.初年度に導いた非線形Schrodinger方程式の理論解および数値解を求める。 2.異種の非線形Schrodinger方程式の導出を完了し,上記1との差異を明らかにする。 3.粘性・熱伝導の効果を取り入れ,衝撃波面における散逸が及ぼす影響を調べる。 4.流速の効果が波に及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
初年度,想定以上に理論解析が進展したため,数値解析用ワークステーションの購入を先送りとした。次年度使用額は,当該ワークステーション購入および初年度の成果公表に充てる予定である。
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Research Products
(33 results)