2022 Fiscal Year Research-status Report
キャビテーションの弱非線形効果を利用した水中高速音響ソリトンの実現と応用
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18K03942
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金川 哲也 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80726307)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気泡流 / 非線形音響学 / 非線形波動方程式 / 多分散性 / 安定性解析 / 二流体モデル / 超音波造影剤 / 粘弾性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
キャビテーションにおける弱い非線形効果の利活用に着目し、水中の気泡の弱非線形振動とそれに伴う気泡流中圧力波の弱非線形伝播を調べるという目的に対し、本年度も、理論的手法を主軸に、数値的手法を併用し研究を行った。その結果下記成果が得られ、9編の査読付雑誌論文が掲載・採択された: (1)昨年度に続き、多分散性のモデリングに関して、異なるアイデアと定式化に基づく理論解析と数値計算を行い、Phys. Fluids とInt. J. Multiph. Flowに各1編が掲載された。(2)昨年度に続き、鮎貝崇広(代表者主宰研究室所属学生/JSPS特別研究員DC1)を中心として、気泡流の二流体モデル方程式の構築および安定性解析に着手し、1編がInt. J. Multiph. Flowに採択された。本研究全般の解析精度向上等に資することが期待される。(3)ゼラチンなどの粘弾性媒質中のキャビテーションの実験的研究が盛んな中にあり、ソフトマターや下記医療応用(超音波腫瘍焼灼など)への展開が昨今注目されている。これにも資する数理モデリングを見据え、粘弾性気泡流中の超音波の解析に新規着手した。液相の弾性を考慮した理論解析と数値計算を行った成果が、Phys. Fluidsに掲載された。更に現在、マグマ流動の発泡に関連する研究にも着手している。(4)非線形効果の応用例の1つとして、超音波診断領域において、超音波造影気泡に係る数理モデルを構築した(Phys. Fluidsに2編掲載、Nonlinear Dyn.に1編掲載)。(5)ここまでの研究成果を社会実装・技術開発に向けて行った提案「水管の損傷回避と洗浄を両立可能な新技術の開発」が、わかしゃち奨励賞を受賞した。 現在、各成果の深化・統合・一般化を行っている。上記成果を含む業績に対して、代表者が、日本流体力学会竜門賞などを受賞したことも、本研究成果への一客観評価として重要といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の理由を根拠に判断した: 1.離散分布、粘弾性媒質、気泡を覆う粘弾性膜、超音波医療などのキーワードは、当初計画に含まれていなかったにも拘らず、解析の立ち上げからはじめ、国際誌への論文複数編の掲載までを達成できた。さらに、より根源的な視点に立ち、気泡流の基礎方程式自体の改良に着手した成果も国際誌に掲載された。これらは、研究計画の定常的な見直しと、研究の進展に伴う研究計画の適切な変更、さらには当初計画を上回る成果を常に追い求めたためであると考えられる。 2.アウトプットとして査読付雑誌論文を最重視しているが、年度内に国際誌9編 (内6編Q1)(いずれもIF2021が4以上)に掲載・採択され、質と量ともに当初計画を大幅に上回ったことは、成果の広範な周知に資する。 3.代表者が、本研究成果の社会実装に向けた研究提案「水管の損傷回避と洗浄を両立可能な新技術の開発」に対して、わかしゃち奨励賞基礎研究部門優秀賞を受賞した(2023年1月)。これは成果の社会還元や技術開発の布石として重要である。 4.本研究成果を含む業績に対して、代表者が、日本流体力学会竜門賞、ターボ機械協会小宮賞、科学技術分野の文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞した。代表者は2019年から5年連続で、若手研究者対象の奨励賞を5学会から受賞している。以上の表彰の被表彰業績のうち2018年度以降の成果は、本課題の成果と密接に関与していることから、以上の表彰は、本課題の成果の水準の高さを示す一証左といえる。さらに、本研究成果に携わった指導学生の学会発表に対して、学生を主対象とする講演表彰7件の受賞があった。
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Strategy for Future Research Activity |
直近年度における顕著な勢いを逃すことなく、最終年度は、研究完了に向けた総括を行う予定である。ただし、コロナ禍に伴う延長措置による期間延長でもあり、実質的には、ほぼ完了のステージにある。本報告書作成時点においては、以下の方策を考えている: 1.前年度までの各成果の深化を完了させ、国際誌に投稿する。 2.国内外の学術表彰を狙うこと、プレスリリース(2022年度に2件)などを行うことで、成果の広範かつ多様な周知に努める。 3.当初計画および本報告書に従い、研究完了に向けて、個々の成果の集約を中心とした総括を行うが、進捗および新型コロナウイルスの状況などに応じて、計画を随時柔軟に見直す。当初計画を上回る成果を常に狙い続けることは言うまでもない。
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Causes of Carryover |
成果の一部の論文投稿が遅れており、次年度使用額が生じた。これは、論文投稿・掲載・オープンアクセス費および英文校正費に充てる予定である。
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Research Products
(59 results)