2020 Fiscal Year Research-status Report
Research and development of passive-type high Reynolds number isotropic turbulence generator in small wind tunnel.
Project/Area Number |
18K03947
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
牛島 達夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314076)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 格子乱流 / フラクタル / 等方性乱流 / 後流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,能動的にかく乱を与えることなしに,通常の格子乱流より,等方性の成立度が高く,また,乱流エネルギーカスケードを観察できる程度のレイノルズ数の乱流を発生できる小規模の乱流発生装置を開発することである.その目的達成のために,考案した2種類の乱流発生格子で生成した流れ場の特性を調べた. 第一に,正方形の板を基本に,正方形の各一辺を一辺の8分の1の長さの辺32個で置き換えることを繰り返してフラクタル状に入り組んだ境界を持つ(フラクタル次元5/3の)平板を設計した.単独のプレートでフラクタルパターンを一回繰り返したものと二回繰り返したものの後流の発展を熱線流速計により調べた.後流幅の成長や速度欠損の減衰が,軸対称後流の理論的な結果とも,別のフラクタルパターンの稜線をもつ(フラクタル次元3/2の)平板の先行研究とも特性が異なることがわかった.中心軸から半値幅程度離れた乱流生成領域では十分に高いレイノルズ数を達成できた.フラクタル平板を格子状に組む前段階でフラクタル平板を流れに垂直に一列に並べたケースの予備実験を行った. 第二の格子は,小物体を格子状に配置し,流路内に係留するものである.重力の影響が主流方向に垂直な断面で等方となるように竪型の流下式の小型風洞を準備し,乱流減衰の調査を調べた.流れの方向を変化させても,係留格子による乱流の特徴(従来の静止した正方格子に比べ,乱れ強度と積分長さが相対的に大きい)が変わらないことがわかった.しかしながら,風速を小さくし過ぎると,係留物が十分に揺動せず,乱れが強められないことと,ある程度高いレイノルズ数でも等方性の成立度などが風速に依存することがわかった.また,係留物の揺動を画像解析し,積分スケールが正方格子に比べて大きくなることが遮蔽率の変動と関連していることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フラクタル形状の稜線をもつ平板の後流を測定した.当初は基準の正方形の一辺が20㎝のものを製作したが,相対的により下流までの後流の発展を調べるために,8cmのものを製作し,後流の測定を行った.基準の大きさの20倍まで半値幅が基準の大きさまで発達することがわかった.また,平均せん断の強い部分で,乱流生成項より乱流レイノルズ数をみつもったところ風速12.5m/sでテイラー長基準のレイノルズ数が300になることを確認した.しかし,基本パターンを2回繰り返した場合は,乱流が反って抑えられることがわかった.それは,最小辺の長さが粘性長さ程度であり,細部のフラクタルパターンが準平衡な乱流の生成に寄与しなかったためである.予備実験でフラクタル平板を一定間隔に一列に並べ,後流速度分布を測定し,単独の平板の場合と比較を行った. 流下式竪型小型風洞での係留格子(2.5~10m/sで操作)は,流速を下げていくと,千鳥に配置した係留小円柱の係留糸が短い方が揺動しなくなり,隣通しの円柱が衝突しなくなるために,乱流がうまく生成されず,乱流特性が流速に依存することがわかった.今後,係留の方法について更に検討が必要である. 本年は,実験装置の各種の改良を実施して実験を行う予定であったが,コロナウィルス感染拡大のため,時間空間および人的に制約があり,実験装置の改良や新規の計測システム導入が進まなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
フラクタル平板によって構成された格子の乱流特性調査を測定装置に改良を加えながら継続して行う.コロナウィルスの感染拡大については今後も予断を許さないが,予防対策のもと研究活動ができる状態である.年度の前半は,測定装置が常に操作できるように,これまでの実験の再現性の確認を行う.同時並行で,(1)フラクタル平板を利用した格子の製作,(2)係留格子の設計改良,(3)速度測定プローブ移動装置の改良を行っていく. フラクタル平板を利用した格子では,乱流の減衰について調査する.係留格子では,2点間の速度同時測定で速度構造関数を調べ,乱流のエネルギーカスケードの仕組みについて迫っていく.また,微細渦をバーガーズ渦で近似し,散逸領域での渦の空間分布などについて調査する.
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大で,新しい形式の講義の準備にほとんどの時間が費やされ,科研費を利用した実験装置の改良や新規測定装置の設計に十分な時間を確保できなかった.主に前年度までの実験の再現性確認の実験及び取得データの再分析にとどまったため,まとまった形での実験用部品の購入に至らなかった. 今年度は国内学会のほとんどがオンライン開催の可能性が高く,海外渡航は極めて難しい状況である.旅費として支出は難しい. 当初自作した速度測定用トラバースが流路断面積に対して占有率が高く,流路内の平均流を一部歪めてしまっている.その影響をできるだけ抑えるために,トラバースを再設計する予定であり,その際の移動装置の購入を検討している.また,必要に応じて,熱線流速計の部品を拡充していく.
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