2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new flow control methodology using periodic wall heating
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18K03952
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 流れの制御 / 壁面加熱 / 自然対流 / 内部流れ / 抵抗低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験研究では,壁面の周期加熱を利用した低レイノルズ数内部流れの抵抗低減および駆動力の発生手法を確立すべく,その基礎性質を平面チャネル流れを対象に調べている.これは,特殊な表面加工や流路内へのデバイスの設置を必要としない特徴を持つ新機軸の流体制御手法である. 2018年度は壁面分布加熱による摩擦抵抗低減効果(Super-Thermo-Hydrophobic Effect)および,壁面加熱と壁面の波打の組み合わせによる流れの駆動(Thermal Drift)について,実験を中心に調べた. 特に前者については,実験で実現された壁面温度分布に基づいた詳細な数値解析(二次元ブジネスク近似モデル)も行い,実験結果との比較を通じて詳細な考察・検討を行った.その結果,壁面の周期加熱により,浮力による定在ロールが生成されることが確認されるとともに,ロールの大きさ,はく離・再付着位置,および流れ場の速度分布がいずれのレイノルズ数においても解析結果と極めて良く一致することが示され,壁面温度分布が抵抗低減に導くことが間接的に実証された.この成果は,Journal of Fluid Mechanicsに投稿され,2019年4月にアクセプトされた. 後者については,実験モデルの設計・製作手法の再検討から開始した.これは,後者の現象が,前者よりも外乱に対し極めて敏感であることに依る.NCフライスによる壁面の精密加工と前者で確立した分布温度実現手法を組み合わせて慎重に実験を行ったところ,分布加熱を有する波状壁が水平流れを誘起し,その方向は温度分布の位相で制御できることが見出された.この成果は,1件の国内会議,1件の国際会議で発表され,現在論文投稿に向けて理論解析との比較を実施中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
壁面加熱による抵抗低減について,本課題実施前の予備実験(スモークによる流れの可視化)から定性的な一致は確認していたものの,工学的に見た場合,定量評価が欠かせない.ただし,本実験のレイノルズ数は20以下と小さく,そのような流れ場での抵抗変化(本実験では摩擦抵抗のみ)を直接計測で正しく評価することは難しい.そこで,本研究では,流れ場の速度分布計測を可能な限り精密に計測し,対応する圧力がポアッソン方程式を通じて一意に定まる低マッハ数流れの性質に基づいて,壁面分布加熱が確かに抵抗低減に導くことを実証した.これは計画の第一段階完了に対応する. 次の段階である,壁面の波打との組み合わせによる水平流の駆動については,両側が大気開放された水平チャネルで検証する必要があり,外的要因(外乱,温度分布,壁面形状の仕上がり等)の影響を最小限に抑えることが強く求められた.実験装置の設計・製作はこうした点を慎重に考慮して行われ,12波長分の精密モデルを製作した.実験データの質に直結する外乱の回避法については,試行錯誤を繰り返しながら流れ場の観察を実施し,種々のレイリー数で再現性が確保できる実験法を確立した.スモークによる観察から,壁面加熱によって定在対流ロールとその間を縫って流れる水平流が駆動されることが確認され,流量はレイリー数とともに単調に増加することが確認された.また,加熱の位相を180°変えると水平流は強さは同じで向きが反転することが示された. 以上のように,各課題において当初の予想を超えた慎重な取り扱いが求められたものの,一つずつ要因を検討・克服し,概ね計画していた内容が実施できた.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は,前年度からの研究課題を継続し,分布加熱を有する波状壁面により駆動される流れ(Thermal Drift)について,理論解析との比較から詳細に検討する.これは,先に実施した抵抗低減研究と同様,研究協力者のFloryan教授(カナダ・ウエスタンオンタリオ大)と共同で実施する(稲澤が実験,Floryan教授が解析を担当).実験モデルの寸法,および温度分布データを解析の境界条件に適用し,流れ場のパターンと合計の流量がレイリー数とともにどのように変化するかを比較する.研究結果は,国内・国外の会議で発表予定である. 以上の実施内容完了後に,流れ場の三次元性が制御効果に及ぼす影響を明らかにする実験に取り組む.これは,工学的に重要な内部流れはダクトあるいは円管であることに基づく.先行している理論解析も二次元チャネル流のみを対象としており,三次元性の効果は考慮していない.こうした三次元性の影響については,解析よりも実験の方がパラメータを容易に変化させることができる有利性をもつ.実験はチャネル側壁間隔を減らすことで容易に実行でき,まずは,チャネルから矩形ダクトに近づけた場合の流れの変化を,Super-Thermo-Hydrophobic EffectおよびThermal Driftにおいて,測定のスパン断面を異動させながら観察する.得られた結果を基に,矩形断面での有効性を明らかにするとともに,円管に対する適用の可能性についても検討する.
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Causes of Carryover |
Thermal Drift実験に際し,必要な波状壁長さを実験観察により定めた結果,当初考えていた波長数よりも短い波長で流れが一定になることが分かったための消耗品費がわずかに予定を下回った.また,その他の費目として計上していた国際会議参加登録費に繰り越しが生じた. 繰り越した金額については,平成31年度以降の実験に必要な消耗品費として執行を計画している.
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Research Products
(4 results)