2020 Fiscal Year Research-status Report
流体力学に関する誤情報の拡散への科学的・心理的・社会的原因の解明とその拡散の防止
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18K03956
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
石綿 良三 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00159790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 基子 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10460255)
神谷 克政 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60436243)
根本 光正 神奈川工科大学, 工学部, 助教 (90085134)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 流体力学 / 誤認識 / 科学教育 / ベルヌーイの定理 / 科学動画 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの科学入門書、テレビ番組、インターネット情報などで流体力学現象の原理の誤認識が多く見られる。誤認識の拡散実態と拡散メカニズムを調査研究し、拡散防止策の提言を進めた。特に、拡散メカニズムには科学的要因だけではなく、著者や読者の理解とその心理、社会的背景等まで踏み込む必要があり、その追及を行った。(新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、研究の進行に制約を受けた。2020年度は当初の研究最終年度あったが、期間を1年間延長し2021年度に継続することになった。) 小学校5年理科の教科書・参考書で「曲がる川では外側が速い」と記述されていることについて調査を進めた。厚木市近隣の実際の川における計測では、外側が速いか、遅いかは一概にはいえないことを確認した。しかし、内側に堆積している川では外側で速くなることが多く、教科書の記述に合うともいえる。だが、曲がることに外側を速くする効果があると認識させてしまうことは問題であり、大学で習う流体力学とは矛盾することになる。実際の川における計測はまだ不十分であるので、調査範囲を拡大するとともに文献調査を進める予定である。 小学校5年理科の「曲がる川」に関するビデオ教材の調査を行った。それらの教材では、外側で速く、内側で遅く流れている川の映像、実験映像ばかりである。これは教育内容に則したものであり、当然の状況であるが、実際には一概に外側が速いわけではないので、一部の偏った情報のみが選択的に公開され、教育に利用されている可能性がある。この点についてさらなる調査を2021年度に行う予定である。 なお、これまで行ってきた、理科教員、科学館スタッフ、科学ボランティア、大学・高専教員を対象にした研修会を実施することができなかった。流体力学に関する原理の理解状況、誤認識の実態調査を直接行えなかったので、この点については2021年度に継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、学外におけるフィールド実験が大幅に制約された。また、理科教員、科学館スタッフ、科学ボランティアへの直接のアンケート調査やインタビューが行えなかった。理科教室の実施回数が激減し(1回のみ。例年は3~6回くらい)、子供たちの関心や理解などの実態を把握する機会が少なかった。以上により研究の遂行が遅れた。2021年度に期間延長したので、この遅れを挽回する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
曲がる川の流れについては、2020年度には厚木市内の河川で実地調査を行ったが、もっと地方を含めた広い範囲で実地調査を計画したい。「曲がり部では外側が速い」ということの普遍性がどの程度かを調べる予定である。 理科教員、科学館スタッフ等への研修会は継続して、関係者の知識・理解レベル、理解の仕方、誤認識の発生する要因などを調べたい。ただし、今年度は新コロナ対応で、集会事業(科学イベント、研修会等)が制限される可能性があり、情勢を見ながら判断したい。 科学入門書については、この1年に発行されたものを抽出して調査・分析を継続する。それらを過去のデータベースに加えて、全体としての分析を進める。 最終年度となるので、これまでの成果を持ち寄り、4名で分析、評価を行い、成果をまとめたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大で研究の進行が遅れ、期間を1年間延長したため。 2020年度で実行できなかった研究を遂行するために使用する。 部品購入、フィールド実験のための遠征旅費、学会発表旅費、その他に充てる。
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Research Products
(17 results)