2022 Fiscal Year Research-status Report
流体力学に関する誤情報の拡散への科学的・心理的・社会的原因の解明とその拡散の防止
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18K03956
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
石綿 良三 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00159790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 基子 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10460255)
神谷 克政 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60436243)
根本 光正 神奈川工科大学, 工学部, 助教 (90085134)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流体力学 / 誤認識の拡散 / 曲がる川の流れ / 科学教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
流体力学に関する原理の誤認識が拡散する直接的原因、および心理的、社会的原因・背景について調査、分析を行ってきた。 (1)曲がる川の流速分布について:小学校5年理科の教科書では、「曲がり部の外側で速く、内側で遅い」と記述されているが、流体力学的には曲がりの効果としては内側を速くすると考えられ、両者の矛盾を調査・検討した。浮き彫りになってきたのは、下流域では二次流れによって内側に堆積し、浅瀬ができ、流速が遅くなる傾向が見られる。一方、上流部への調査(富山県黒部峡谷、東京都秋川渓谷等)により、上流部では堆積よりも侵食が卓越し、曲がり内側に浅瀬ができることなく内側の方が速い川も存在する。必ずしも外側が速いとは言えない。(2)小学校教科書に「外側の方が速い」と記述されていることから、ビデオ教材やインターネット上の動画は「外側が速い」動画や情報が圧倒的多数になっている。これに矛盾する動画は少数派となっている。多数派が正しいと裏付けられるリスクがある。(3)一般によく見かけられる川の多くは、平野部(人口多)、下流域、内側に堆積、内側が遅いというものである。これと比較して上流域では、山間部(人口少)、森林や谷などで川に近づきにくい、侵食が堆積よりも卓越、曲がり内側が速いという傾向が見られた。ただし、サンプル数が少なく、さらなる調査が必要である。(4)山間部の川は人目につきにくく、小学校理科で下流域の川で見られる「曲がり部では外側が速い」とする根拠の一つかもしれない。フィールド計測をさらに実施していく必要がある。(5)V字谷で知られる黒部峡谷では内側の崖の傾斜が外側よりも急なところが見られ、内側の流速が速いという証拠となる可能性がある。検証が必要。(6)神奈川県山北の用水路では曲がり部で内側部の流速が大きくなっている箇所を確認した。これは堆積対策を行い、内側の浅瀬がないためと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究期間は2018~2020年度の3年間であったが、新型コロナの感染拡大により、行動規制がかかり、フィールド実験が大幅に不足してしまった。また、学会発表や学外でもディスカッションの機会も少なくなり、制約を受けた。そのため、2021~2022年度の2年間の期間延長を行い、成果の蓄積ができたが、さらに研究を充実させるため2023年度に最後の延長を行い、研究を完結させる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)曲がる川の流れについては、特に上流域・中流域へのフィールド計測を増やし、これまでの成果の検証を行う。 (2)誤認識が拡散する最大の原因の一つは、情報発信する著者・教員・投稿者の知識不足や認識不足にあると考えられ、その裏付けを取っていく。ここ3年間制限を受けていた科学イベント、教員・科学ボランティアへの研究会の実施を通じて、誤認識拡散の防止策を試行する予定である。 (3)正しい理解を普及させるため、日本機械学会流体工学部門ホームページにおいて実験動画公開を続けていく。新たな教材開発も行っていく。 (4)成果の学会発表を行う。 (5)急速な進化と普及が進んでいる生成AIの効果と社会的な影響についても検討が必要である。題材により、誤情報を元に回答が生成され、これまでにない大規模で急速な誤情報の拡散が起こる危険性がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナ関連の影響で研究が遅れた部分があり、2023年度に期間延長を行ったため。2023年度で研究成果を完結させるため残額を使用する。
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Research Products
(27 results)