2018 Fiscal Year Research-status Report
超音波照射によるリチウム空気電池多孔質電極内の酸素輸送促進と高電流密度化
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18K03972
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
植村 豪 東京工業大学, 工学院, 特任准教授 (70515163)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リチウム空気電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,リチウム空気電池の空気極に超音波振動を加えることで電解液中に対流(音響流)を誘起し,さらに反応面近傍の濃度境界層を薄くすることで,高電流密度での放電を実現できる酸素輸送の促進を目指す.超音波を照射した多孔質構造内で生じる,移流・拡散・反応が共存する酸素輸送現象を解明することを研究目的とする. 本年度は超音波振動によって正極多孔質電極内に音響流を誘起できるリチウム空気電池を構築し,酸素輸送の促進が正極過電圧の低減に及ぼす影響を調べた.反応面積4 mm×4 mmの矩形正極に対して超音波振動子を取り付け,超音波振動子と正極間の電気絶縁,振動伝達,大気中からの酸素輸送を全て満足する設計を実現した. 予備実験として電解液に微粒子を混入して超音波を加え,顕微鏡で観察した結果,音響流が誘起される様子が捉えられた.このためまず音響流が誘起されやすい正極として,剛性が高く空隙の大きいニッケル多孔質を用い,超音波振動が放電特性に及ぼす影響を調べた.実験の結果,超音波振動を加えることで,リチウム空気電池放電時の過電圧が大幅に低減されることが分かった.さらに通常のリチウム空気電池に用いられる炭素多孔質電極を用いた実験においても,同様に過電圧が低減される結果が得られた.このことから,ニッケル多孔質よりも剛性が低く,空隙径も小さい電極内においても,超音波振動による酸素輸送の促進効果が得られることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,超音波振動によって電解液中に音響流を誘起させるリチウム空気電池を構築し,放電時の過電圧を低減させることに成功した.軟質材料で空隙構造が微細な正極では,十分な音響流が誘起されないことも懸念されたが,炭素多孔質電極の数十ミクロン程度の空隙内でも音響流が生じ,酸素輸送の促進に寄与していることを示唆する結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施した研究から,超音波振動によって多孔質電極中に音響流を誘起し,リチウム空気電池放電時の過電圧低減が実現できることが明らかとなった.しかし多孔質電極内においてどの程度の範囲まで酸素が輸送され,反応が生じているか分かっていないため,電気化学インピーダンス計測による放電特性の解析を進める.さらにX線可視化計測によって固体析出物の生成範囲を捉えることで,電極内の反応分布を調べる.特に超音波振動を加える効果として,反応面に固着した固体析出物が除去されることも視野に入れた実験を進める.
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Causes of Carryover |
超音波振動の発生に必要となる電子機器類について,既存装置の流用ができたため,繰越額が生じた.繰り越し分については,平成31年度に電気化学インピーダンス計測,およびX線可視化計測に用いる予定である.
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