2018 Fiscal Year Research-status Report
薄膜・ナノ粒子形成のための高真空条件における浮遊液滴の減圧沸騰
Project/Area Number |
18K03987
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
大嶋 元啓 富山県立大学, 工学部, 講師 (40511803)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液滴 / 減圧沸騰 / 真空 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで申請者らは内燃機関で使用されている減圧沸騰噴霧の制御技術を薄膜形成,ナノ粒子形成に応用する研究を進めてきた.本研究で対象としている雰囲気圧力は内燃機関で対象となる雰囲気圧と比較して低い0.01~数Paの高真空条件であり,大きな減圧度における減圧沸騰噴霧特性を把握し制御する必要がある.よって,本研究では高真空場の減圧沸騰における液滴内の気泡核の生成,成長,崩壊を明らかにすることを目的としている.申請時の各年度における研究の当初計画を以下に示す. 平成30年度【浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影】 平成30年度では直接撮影により浮遊液滴の減圧場における微粒化過程を撮影する.光源にはNd:YAGレーザーを用いて拡大レンズ系とCCDカメラにより把握する.液滴径は光学機器の性能の関係上1 mm程度とし,液体には水および燃料を用いる.雰囲気条件は大きな減圧度を確保した条件とする. 平成31年度以降【液滴周りのガス濃度測定】 減圧沸騰により液滴から気化したガス質量を光学撮影により把握する.光学撮影にはLIFなどの蛍光を利用した液滴周りのガス濃度計測を計画している. 平成31年度以降【単一液滴の減圧沸騰の数値計算】 実験で得られた結果と数値計算から大きな減圧度における気泡核数,初期気泡径を推定する.まず,千田らが過去に提案したモデルを基に高真空場対応の減圧沸騰の0次元計算プログラムを構築し,単一液滴の減圧沸騰による蒸発計算を行う.その後,OpenFOAMを用いて3次元計算を行う. 当初の研究計画は上記のとおりであり,この研究計画を基に平成30年度は研究を遂行した.しかし,実験装置の不具合により,実験を遂行できない状況が続き,当初の計画から遅延している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画に基づき,「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」を遂行するため,平成30年度では申請者が構築している液滴浮遊装置の安定的な液滴の浮遊条件の最適化を行った.その結果,反射板の形状を最適化することにより,直径1mmの水液滴の安定的な浮遊に成功した.その後,高速度ビデオカメラを用いて減圧沸騰微粒化過程の撮影に取り掛かる予定であったが,液滴浮遊装置の制御装置に不具合が発生し,この整備に時間を要した.また,将来的に使用する光源のNd:YAGレーザーにも不具合が見つかり,一部を残して修理した.以上のことより,「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」の項目については当初計画より遅延している.現在,浮遊液滴装置に関する修理はすべて完了しており,ハイスピードビデオカメラによる液滴の撮影の準備中である. また,平成30年度では平成31年度以降に実施予定の「単一液滴の減圧沸騰の数値計算」に前倒しで取り掛かった.現在,千田らが提案している減圧沸騰モデルを基に高真空場対応の0次元計算プログラムの構築中である.本プログラムの基本的な構成は構築済みであり,本プログラムで低真空の雰囲気圧の小さな減圧度における計算を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の遅延を取り戻すため,令和元年度からは以下に示す計画で研究を遂行する予定である. ■令和元年度 ・浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影 昨年度に準備が完了した液滴浮遊装置を用いて,減圧沸騰微粒化過程を撮影する.減圧沸騰微粒化過程の全体像を把握するために,拡大撮影系を用いたハイスピードビデオカメラを用いて撮影する.そして,Nd:YAGレーザー,拡大撮影系を組み合わせたCCDカメラを用いて,詳細に微粒化過程を把握する.なお,液体には水を用い,雰囲気圧は0.01~数Paとする予定である. ・単一液滴の減圧沸騰の数値計算 今年度では昨年度から進めている減圧沸騰噴霧の0次元計算プログラムを高真空場対応に改善する.また,並行して,減圧沸騰モデルに導入するOpenFOAMのコード解析を行う.使用するソルバはSprayFOAMを予定している.その後,減圧沸騰モデルの適用を試みる.改善すべき点は気泡の核生成数であると考えており,「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」で得られた結果を基に0次元計算プログラムを用いて,核生成数を考察する. ■令和二年度 ・液滴周りのガス濃度測定 令和元年度で実施予定の「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」では,減圧沸騰による液滴の微粒化現象を把握するが,令和二年度では液滴の減圧沸騰で蒸発した液滴周りのガス濃度を光学撮影により試みる.光学撮影にはLIFなどの蛍光を利用した液滴周りのガス濃度計測を計画しているが,他の光学撮影方法についても検討する.雰囲気圧条件は「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」と同様に0.01~数Paとする.
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Causes of Carryover |
液滴浮遊装置の制御装置に不具合が発生し,この整備に時間を要した.また,将来的に使用する光源のNd:YAGレーザーにも不具合が見つかり,この修理にも時間を要した.以上より,平成30年度で研究の遂行を予定していた「浮遊液滴の減圧沸騰微粒化過程の撮影」が当初計画より遅延する結果となった.よって,当初計画していた物品の購入計画に遅延が生じ,次年度使用額が生じた.現在,浮遊液滴装置に関する修理はすべて完了しており,ハイスピードビデオカメラによる液滴の撮影の準備中である. 生じた次年度使用額は今後の研究の推進方策で述べさせていただいたように浮遊液滴の減圧沸騰微粒化の撮影の遂行資金に充当することを予定している.具体的には,使用予定のNd:YAGレーザーのレーザー強度を評価するためにレーザーパワーメータ,拡大撮影系および液滴周りのガス濃度を計測するための光学機器を購入する予定である.
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