2020 Fiscal Year Research-status Report
薄膜・ナノ粒子形成のための高真空条件における浮遊液滴の減圧沸騰
Project/Area Number |
18K03987
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
大嶋 元啓 富山県立大学, 工学部, 講師 (40511803)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 減圧沸騰 / 液滴 / 真空 / 蒸発 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマは薄膜形成,ナノ粒子形成時における高真空雰囲気圧に噴射したときの液滴の減圧沸騰現象を明らかにすることを目的としている.これまで,空間に浮遊した液滴の減圧沸騰過程を実験および数値計算により,研究を行ってきた.実験および数値計算における研究実績の概要を以下に示す. ■実験について 減圧場において液滴を保持する機構および液滴周りのガス濃度測定の検討を行う予定であったが,昨今の感染症蔓延の状況から,実験の遂行が不可能となった. ■数値計算について 液体の減圧沸騰シミュレーションプログラムの修正を完了した.雰囲気圧力100 Pa程度で気泡の成長の計算が可能となった.また,OpenFOAMを用いた減圧沸騰の3次元シミュレーションにも取り掛かった.はじめにプログラムの検証のため噴霧の微粒化モデルのアルゴリズムの解読を行い,計算結果と過去の実験結果を比較した.得られた成果をオープンCAEシンポジウムにて発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画通り,実験を行う予定であったが,感染症蔓延の状況より所属機関での一定期間の使用が中止された.よって,実験を遂行することが困難となった.そのため本実施期間では実験を実施せず,装置改良のための機器の改良項目の確認のみとし,主に数値計算による減圧沸騰シミュレーションに関する研究を行った.実験および数値計算についての現在までの進捗状況の詳細を項目ごとに以下に示す. ■実験について 液滴の減圧沸騰過程を観察するには観察できる減圧対応可能な容器が必要となる.本研究では申請者が所持している減圧対応容器を用いる予定である.しかし,急減圧に対応していないため,装置の改良が必要となる.本実施期間では装置改良のための改良項目を確認した.
■数値計算について 前年度より進めていた0次元プログラムの初期条件の設定および計算アルゴリズムを見直した.その結果,気泡成長の計算に用いる収束計算に不具合より,正確に気泡成長の計算ができないことがわかった.修正を行った結果,100 Paまで安定した計算を実行することができた.また,プログラムの計算結果より気泡径は数msでは雰囲気圧力の変化が成長率に及ぼす影響はないことがわかった. OpenFOAMを用いた減圧沸騰の3次元シミュレーションのために,計算プログラムの検証と減圧沸騰シミュレーションができるようにコードの改造を行った.まず,OpenFOAMで使用されている微粒化モデルであるLISAモデルの検討のため,実験結果と比較した.その成果はオープンCAEシンポジウムにて発表を行った.また,減圧沸騰モデル実装のために蒸発モデルおよび微粒化モデルのアルゴリズムの解読を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度においては昨年度で実施できなかった実験内容を中心に遂行する.また,減圧沸騰モデルの構築を引き続き進める.実験および数値計算についての今後の研究の推進方策の詳細を項目ごとに以下に示す. ■実験について 昨年度実施できなかった超音波による液滴の安定的な保持機構の検討を行う.液滴径は0.5 mm程度とし,その挙動を高速度ビデオカメラにより観察する予定である.またその時の液滴周りの流れをレーザーシートおよび高速度ビデオカメラにより観察し,液滴周りにおける流れとその挙動の関係を明らかにする予定である.浮遊液滴の減圧沸騰を観察するために,昨年度で確認した機器の改良項目に基づき観察容器を改良する.改良した観察容器を用いて液滴の減圧沸騰を観察し,ガス濃度を測定する予定である.得られた成果は2021年度に開催される熱流体に関連する学会にて発表する予定である. ■数値計算について 昨年度に行った蒸発モデル,微粒化モデルのアルゴリズムの解読を基に減圧沸騰シミュレーションに必要な情報を追加し,減圧沸騰モデルの構築を目指す.そして,モデルの検証のため,構築したモデルにより減圧沸騰に近い過熱による沸騰条件でシミュレーションを行い,その結果と過去の実験で発表されている実験結果と比較する.得られた成果は2021年度に開催される計算に関する学会等で発表する予定である.
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画通り,実験を行う予定であったが,感染症蔓延より所属機関での一定期間の利用が中止された.よって,実験の遂行が困難となった.次年度には液滴周りの蒸気濃度分布を測定するために必要な光学備品を購入する予定である.
|