2019 Fiscal Year Research-status Report
極低温流体による生体細胞の機能的冷却時に発生する沸騰現象の熱・流体・物質伝達機構
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18K03995
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
野澤 正和 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60447183)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 沸騰熱伝達 / 凍結保存 / 液体窒素中の伝熱・流動 / 伝熱促進 / 可視化 / 温度計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体細胞の凍結保存において、凍結・融解後の生存率の向上を目指し、液体窒素への直接浸漬冷却を用いた機能的な冷却技術について、熱・流体・物質伝達の観点から考察を行う。研究の2年目は、「急速冷却における凍結保存時の可視化装置の製作・計測」を行った。冷却対象表面の状態をステンレスメッシュで覆うことによって、液体窒素浸漬時の冷却速度が改善することが確認された。今年度は、冷却対象表面に生じる膜沸騰状態の、メッシュの有無による違いを可視化観測から明らかにした。同時に、冷却対象表面の伝熱特性の変化が、冷却対象内のどの深さの位置まで影響を及ぼすかについて、温度計測により明らかにした。 可視化観測については、可視化観測を用意にするため、冷却対象として、温度計測実験に用いたクライオバイアルと同等のサイズの銅ブロックを用い、液体窒素内へ浸漬した直後の膜沸騰状態を高速度カメラにより観測した。可視化観測結果より、1インチあたり60メッシュのステンレスメッシュを巻いた場合の蒸気膜は、メッシュが無い場合に比べて、蒸気膜厚さが薄くなっていることが確認できた。また、蒸気膜の挙動として、メッシュに接した状態で動いていることが確認できた。 続いて、冷却対象表面の膜沸騰状態の変化が、対象内部の温度変化に及ぼす影響について、温度計測について明らかにした。研究の初年度では、容器の表面から2 mmの深さの位置では、メッシュの有無によらず大きな違いは無いことが確認された。今年度は、表面から1 mmの位置での温度計測を行った。温度計測結果より、表面から1 mmの位置では、膜沸騰状態から核沸騰状態に遷移する様子が捉えることができ、冷却対象表面の状態が、内部の温度変化にも影響を及ぼすことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
冷却対象表面形状の変化と、ヘリウムガスを用いた強制蒸発現象の効果を併せた冷却法を考案していたが、冷却対象表面形状の変化で、伝熱特性に違いが確認できたため、ヘリウムガスを用いた実験は、次年度に持ち越すことになった。また、可視化観測はできたものの、冷却対象内部の凍結による変化の可視化は実施しておらず、この実験も次年度に持ち越しの予定である。 一方で、表面形状の変化による膜沸騰状態の可視化で得られた結果については、国内学会(日本機械学会年次大会)、シンポジウム(東北地区高専産学連携シンポジウム)、国際学会(低温工学)の学会にて発表を行うことができ、研究成果はおおむね順調に出ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
学会発表の質疑応答の際に、今年度得られた伝熱特性の変化が、実際の生体細胞の生存率にどの程度の影響を及ぼすかという質問を頂いた。実際に、今回の可視化実験では、冷却対象に銅ブロックを用いているため、生体細胞の生存率に及ぼす効果については不明のままである。この点の解決策として、①実際の生体細胞を用いた実験を行い、②凍結解凍後の生体細胞の生存状況の検査の2点が必要となる。これらの点については、研究協力者の先生に、生体試料の提供や、細胞の生死状態の判別のための蛍光顕微鏡の使用をサポートして頂きながら明らかにすることで、本研究で確認できている伝熱特性の改善が、実際の生体細胞へ及ぼす影響について、定量的に評価することが期待できる。
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Causes of Carryover |
冷却対象表面に生じる膜沸騰状態観測のための可視化装置の製作は行ったが、冷却対象内部の観測のための可視化観測装置の製作が行えなかったためである。次年度、内部の凍結状態の観測が可能な試験部の製作を行い、実験・解析を行う予定である。
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