2018 Fiscal Year Research-status Report
遮熱コーティングの高温高圧下における熱拡散率測定技術の開発と遮熱機構の解明
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18K04001
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
阿子島 めぐみ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20356356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 智 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (80260785)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遮熱コーティング / 熱拡散率 / レーザフラッシュ法 / 溶射皮膜 / 多孔質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガスタービン発電の発電効率の向上に向けて、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating, TBC)の視点から、より厳密な熱設計を行うために必要になる精確な熱伝導率・熱拡散率データを整備し、TBCの遮熱機構を考慮したコーティング材料の設計への指針を提案することが期待されている。 我々は以前、TBCの表面層(Top coat, TC)に着目して、その熱拡散率が「1気圧から真空へ減圧雰囲気では圧力に依存する」、「気孔率と気孔形状に依存する」、「異方的で板厚方向と面内方向が異なる」ことを明らかにした。実際のガスタービンは高温高圧下で稼働するため、圧力に依存する気体の熱伝導率・熱拡散率の影響を受けるであろうTCの熱伝導率・熱拡散率を知りたいところであるが、これまで研究例は無い。そこで、本研究では、測定データが無いTCの加圧雰囲気下での熱拡散率測定を実現して、TCの遮熱機構の雰囲気・圧力依存性を調べることを目的とし、遮熱機構の解明を目指す。 熱拡散率測定にはレーザフラッシュ法を用いる。レーザフラッシュ法は非接触・非破壊で固体材料の熱拡散率を測定することが出来ることから、研究の目的とする高温高圧下での測定に適していると考えて採用した。レーザフラッシュ法を用いて高温・加圧雰囲気下での熱拡散率測定を行うためには、高温高圧セルを設計・製作して実験に用いる必要がある。研究期間の初年度である当該年度では、測定時に試料を加圧雰囲気下に保持できる高温高圧セルのデザインを検討し、作製を進めた。また、セル内の試料保持部品の設計と測定に必要な光学系の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画に従って、加圧雰囲気下測定用の高温高圧セルのデザインを検討した。加圧雰囲気に耐えられる素材、構造、安全性を備えていることに加え、レーザフラッシュ法におけるレーザ光による試料加熱と試料の温度変化観測ができる構造であること(透過実験ができる構造)、レーザ光・温度変化観測が可能で強度のある窓材を用いることを考慮し、更には将来的に市販のレーザフラッシュ熱拡散率測定装置にも取り付けることが可能なサイズ感のセルにする方向性で検討し、最終的に、セル本体は100 mm立方程度に収まるデザイン(配管・配線含まず)に決定した。設計において、考慮すべき事項が予想よりも多く、検討には当初の計画よりも時間を要したが、良いデザインが出来たと考えている。設計に時間を要したため、作製の開始が遅れ、そのためにセルの納品が年度末を1ヵ月超えた。そのため、研究計画で予定していた高圧セル内の試料保持部品の設計・製作および高圧セルを用いた常温でのテスト測定は次年度に持ち越しとなった。このように遅れ気味の進捗となっているが、本研究の要となる高圧セルの製作は研究計画に沿って実施できたと言える。 研究計画では予定していなかったが、減圧雰囲気下での熱拡散率の挙動確認を追加で行った。先行研究で実施していたTCの真空中および真空度を変化させた熱拡散率測定を更に進めて熱拡散率の雰囲気依存性が材料の構造と関係することを再認識し、今後加圧雰囲気下の測定結果が得られた後の議論に役に立てるため、文献調査も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
時間的な遅れはあるが内容は計画に沿って進めることが出来ている。 初年度に高圧セルを設計・製作して2年目の初めに入手できたことから、今後はセル内の試料保持部品を製作し、それらを用いて常温における検証実験を実施する。検証実験を行うにあたり、高圧セルの周辺に、加熱用レーザ光を照射できる光学系と試料温度観測用の光学系を新たに構築して使用する方が今後の実験の効率が良いと再考し、光学系の構築を早急に進めることとする。検証実験の準備を整えた後、1)常温・常圧において、標準物質および先行研究で測定したTC試料について、セルで従来通りの測定結果が得られることを確認する。2)常温において、加圧雰囲気をセルに封じ、熱拡散率測定を試行する。3)試行測定を室温よりも高温で行う。の順で実験を進める予定である。一方、本研究で測定するためのTC試料の準備を進める。TC試料の物質と仕様を検討して決定し、業者に作製を依頼する。これらを実施して2年目となる次年度の末には温度を上げた実験にも着手できるよう、遅れも取り戻すべく研究計画の内容に沿って着実に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
高圧セルの設計に時間を要し、高圧セルは当該年度中に製作に着手(発注)したが、実際の納品が次年度の4月になったため、次年度使用額に高圧セルの購入費用(約87万円)が反映されておらず、次年度使用額にそれが含まれている。当該年度に予定していたセル内部の試料保持部品の設計・作製は、高圧セル納品後に行うことが効率が良いが、高圧セルの入手が遅れたことで、それらの部品入手も次年度に繰越となった。 これらが次年度使用額が生じた原因であり、次年度使用額は、実質的に執行済みの高圧セルの購入費用を除くと、作業が遅れているセル内部の試料保持部品の作製用費用であり、次年度に執行する見込みとなっている。次年度使用額は、翌年度助成金と合わせて、研究計画の内容に沿って確実に執行する予定である。
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