2018 Fiscal Year Research-status Report
静電浮遊法を利用した高温融体の定圧比熱温度依存性の計測
Project/Area Number |
18K04002
|
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
石川 毅彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (00371138)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 高温融体 / 浮遊 / 輻射率 / 定圧比熱 / 偏光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者らが独自に開発を進めてきた静電浮遊法による高温融体の熱物性測定システムに定圧比熱の温度依存性測定機能を追加するものである。これにより、容器を用いた方法では測定が困難な高温融体の定圧比熱を幅広い温度範囲で計測し、高温融体の熱物性データの拡充を促進するものである。 本測定法を確立するためには、輻射率をダイレクトに測定する必要がある。このため、偏光を利用して輻射率を光学的に測定するエリプソメトリーを既存の静電浮遊炉に追加する。そして、エリプソメータによる特定波長の輻射率(絶対値)測定とこれまでに確立した分光器を用いた幅広い波長の相対値測定を組み合わせることにより、輻射率を幅広い波長範囲かつ幅広い温度範囲で実測するシステムを構築する。 本年度は、静電浮遊炉にエリプソメータを組み込むための基本的な研究を行った。市販の偏光計を入手し、ストークスパラメータから消失係数及び屈折率を導出して、最終的に輻射率を算出する機能を確認した。また、光学観察窓材等が測定に与える影響について評価した。そして、アルミ(蒸着反射ミラーの素材)について輻射率の算出を行い、基本的な測定手法に問題がないことを確認した。 静電浮遊法で浮遊可能な試料は直径2mm程度であり、ここで反射するレーザー光の強度は反射ミラーに比べて非常に小さく、SN比が悪くなることが予想される。静電浮遊炉で得られる信号強度を確認するため、簡易な静電浮遊装置を製作し、これに上述の偏光計の組付けを行った。次年度に製作したシステムを用いて信号強度の確認、必要な場合SN比の向上を実施していく予定である。 また、熱物性の基礎データとして、溶融チタンの融点における輻射率及び定圧比熱の測定を実施し論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の本研究では、1,2年目をエリプソメータの静電浮遊炉への組み込みにあてている。本年度は偏光計の入手、基本機能の確認、屈折率を導出手法の確認を行った。また、入手した偏光計を用いて原理通りに輻射率が算出できることをアルミ(蒸着反射ミラー)を用いて確認した。ここまで全く問題はない。 静電浮遊炉組み込みでの最初の課題は直径2mm程度の小試料からの反射で十分な信号(反射光)が得られるかである。これについては実験的に確認するしか方法がないため、簡易な静電浮遊装置(アクリル製チャンバー)を製作した。来年度予定通り、この装置を用いて常温で標準球を浮遊させ、実測によってこの技術課題を検討する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、簡易静電浮遊装置を用いて、浮遊試料からの反射光の偏光計測から輻射率を測定する手法を構築する。順調な場合、次年度末に既存の高温融体用静電浮遊炉に偏光計の組み込みを実施する。 次次年度(最終年度)は、高温融体(ニッケル融体)の輻射率測定を実施して測定系の検証を行う。
|
Causes of Carryover |
偏光計の購入を別予算で充当したため、物品費の支出が計画より若干減り、次年度使用額が生じている。当該資金は、次年度の実験において必要な光学系消耗品の購入に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)