2019 Fiscal Year Research-status Report
適応型セミアクティブ動吸振器を用いた再生びびり振動抑制技術の開発
Project/Area Number |
18K04008
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中野 寛 東京工業大学, 工学院, 准教授 (70433068)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自励振動 / 再生びびり振動 / セミアクティブ動吸振器 / エンドミル加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
切削加工中に生じるびびり振動は,仕上げ面精度の低下,工具の破損や摩耗などを引き起こす原因となる.びびり振動を回避する方法の1つに,びびり振動の発生限界線図を求め,適切な主軸回転数と切込み深さを選択して切削する方法がある.発生限界線図は回転数に対して,極大値と極小値を持ち,この極大値(安定ポケット)の回転数を選択することで,びびり振動が発生しない最大の切込み深さで切削することができる.この発生限界線図の下限値を上昇させる方法として,動吸振器やダンパーを付加する方法が提案されている.しかし,安定ポケットに対応する極大値の大きさは,動吸振器のパラメータによって低下する場合や安定ポケットとなる回転数が変化する場合がある.本課題の研究代表者は,動吸振器のパラメータを適切に調整し,安定ポケットの大きさやその回転数を任意に制御できれば,大幅なびびり振動の発生限界切込み深さの向上が実現できると考えた.本研究課題は,安定ポケットを最大化する動吸振器の最適パラメータを求め,任意の回転数で安定ポケットとなるように制御可能なセミアクティブ動吸振器を開発することを目的とする.2018年度は,動吸振器を付加した時の主振動系の周波数応答から発生限界の極大値とその回転数の関係式を求め,任意の回転数で安定ポケットとするための動吸振器のパラメータを導出した.2019年度は,1自由度系で表した低剛性被削材エンドミル切削モデルに動吸振器を1つ取り付けた場合を例に数値計算を行い,安定ポケットとなる回転数と動吸振器パラメータ(固有振動数,減衰比,質量比)の関係を詳細に調べ,安定ポケットの回転数を変化させるには,動吸振器の固有振動数の影響が減衰比に比べて大きいことを明らかにした. 次に,解析で得た最適パラメータで動吸振器を設計し,切削試験を行ない,動吸振器によって安定ポケットの回転数が移動することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,1自由度系の低剛性被削材モデルに動吸振器を1個取り付けた解析モデルに対して,動吸振器の固有振動数,減衰比,質量比をパラメータとしてびびり振動発生限界線図の極大値を最大にする動吸振器パラメータを数値計算により算出した.その結果,安定ポケットの回転数を変化させるには,動吸振器の固有振動数の影響が減衰比に比べて大きいことを明らかにした.また,従来の定点理論を用いた動吸振器最適設計法や周波数応答の実部の最大値あるいは最小値を最小化する動吸振器最適設計法を用いた場合より,本課題が提案する手法では発生限界線図の極大値をさらに向上できることを明らかにした.さらに,動吸振器の質量比も合わせて変化させることでより広い回転数範囲で安定ポケットとなる回転数を移動させることが可能であることを示した. 次に,固有振動数と減衰比を手動で調整可能な機構を有する動吸振器を製作し,数値解析で得られた結果を元に任意の回転数に安定ポケットを移動することができるか切削加工試験により検証した.平行板バネで支持することで低剛性の被削材を製作し,動吸振器を被削材に取り付け,主軸回転数を変化させて被削材をエンドミル加工した時のびびり振動発生限界線図を実験により求めた結果,動吸振器によって安定ポケットの回転数が移動することを確認した. 以上より,本年度はおおむね順調に本研究課題が進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,固有振動数や減衰比の可変機構を有するセミアクティブ動吸振器を製作し,数値解析で得られたびびり振動発生限界線図の極大値を最大にする動吸振器パラメータを切削加工試験によって検証する. さらに,主軸回転数を変更し,設定した回転数においてびびり振動の発生限界切込み深さが最大となり,昨年度数値解析で示した,定点理論を用いた動吸振器最適設計法や周波数応答の実部の最大値あるいは最小値を最小化する動吸振器最適設計法を用いた場合より,本課題が提案する手法では発生限界線図の極大値をさらに向上できることを実験により確認する.また,発生限界を超えた切込み深さ(びびり振動が発生する条件)で加工試験を行い,動吸振器によるびびり振動発生時の振幅低減効果,加工精度への影響についても検証する.最後に本研究課題の総括を行う.
|
Causes of Carryover |
当初予定していたセミアクティブ動吸振器の検証実験を実施しなかったため,動吸振器製作に必要な物品購入費が未使用となった.次年度に繰り越した分は,2020年度に製作予定の動吸振器の製作費に使用する予定である.
|