2020 Fiscal Year Research-status Report
アダプティブ・フォノニック・メタ構造用いた超音波収束システムの基礎設計
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18K04028
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
植田 毅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30251185)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 点状散乱体 / クロスバースイッチ / 最適化 / フォノニックレンズ / 超音波 / 有限要素解析 / 音響ホログラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
有限要素法を用いたシミュレーション・ソフトCOMSOLによる音響ホログラムを用いた経頭蓋レンズの設計について、脳深部における集束特性を改善するために、レンズ設計領域の厚みを増やし、多層メタマテリアル構造として、設計を試みた。その成果を9月28日~10月3日にオンラインで開催されたMetamaterials 2020において、Fundamental Design of Multi-Layer Fresnel Zone Plates as Ultrasonic Lens for Transcranial Treatmentと題して動画配信発表した。この計算は十分な精度ではあるものの、特に、3次元モデルでの計算は適時性を実現するには難しいと判断せざるを得ない。 他方、水と同じ特性を持つ媒質で頭部を覆い、その中にクロスバースイッチを導入し、適時適所的に微細な気泡を発生させることにより、アダプティブなフォノニックレンズを実現できることを示した。この手法では容易に3次元化が可能で、実用的な計算時間での3次元系の形状最適化のシミュレーションが期待できる。 本研究により、得られたこれらの新たな知見により、令和2年度より、点状散乱体の適切配置によるフォノニックレンズの設計に重点を置いて研究を行った。 6月に北九州市において開催予定であった第25回計算工学講演会において「点状散乱体の配置の最適化によるフネレルレンズ設計」と題して講演予定であったが、講演会が中止となったため、論文集によるオンライン発表となった。 また、点状散乱体レンズについて、3次元系への拡張の定式化を済ませたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画ではマイクロ流路に液体金属を注入し、フォノニックレンズを作製する予定であったが、マイクロ流路に液体金属を注入することが困難であること、液体金属の表面張力が大きいため、液滴の位置制御が難しいことが判明し研究が停滞していたが、水と同質のゼリー状物質内にクロスバースイッチを導入することにより水泡を発生させることでレンズを構成できることを発見したことにより研究が一気に進んだ。 このモデル基づき、レンズ設計領域の厚みを増やし、多層メタマテリアル構造として、有限要素法を用いて、頭蓋骨を通したフレネルレンズの収束特性が大幅に改善した。 しかし、計算に時間的計算機資源的コストが大きく、3次元化は難しいと判断し、構造最適化は点状散乱体モデルで行うこととした。 計算コストが小さいシンプルなモデルとして、格子状に配置した点状散乱体により構成されたレンズを考案し、実用的な波長でのレンズ機能の確認と形状最適化によるその機能の大幅な改善を実現した。このモデルでの設計に注力した結果、実用的な計算時間で散乱体の最適配置を決定できることを示した。比較的少数の散乱体で幅の広い波長レンジで音響レンズを構成できること示した。 この手法の3次元化に取り組み、定式化を終え、現在、プログラムの動作確認中である。 当初計画とは異なる材質、異なる散乱体配置法となったが、より速い応答、高精細化が期待できる手法になったと考えている。その意味において、当初計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
点状散乱体を格子上に配列した音響レンズモデルでは、2次元モデルでホログラフィにより決定した初期配置から最適化により特性に大きく改善がみられた。 さらに詳しい解析を進め、2次元系で波長に対する必要十分な格子定数、散乱体数を決定する。 現在、、多焦点レンズの設計を行っているが、散乱体に対する焦点位置により集束特性に差がみられるため、どのような配置の焦点の組み合わせについても、焦点での場の強さが同じになるように、最適化に用いる評価関数のそれぞれの焦点に関する項の重みの設定方法を確立する。 また、3次元化した系のプログラミングは既に終了し、予備的な数値計算を行っている段階にある。今年度は、3次元的レンズの設計に向けて、具体的なパラメータの決定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度にCOMSOLを用いた有限要素法の数値解析のために人件費を使用予定であったが、大学感染制御部による大学独自のキャンパス内警戒レベル4が発動されたため、行うことが困難となり、次年度に繰り越した。 また、成果発表のために、国際会議WCCM ECCOMAS Congress 2020, metamaterials 2020、及び国内学会、第25回計算工学講演会(北九州市)、計算数理工学シンポジウム2020(松山市)において成果発表予定のであったが、すべてがオンライン開催となったため、旅費が未使用となった。 2020年度執行していなかった助成金を2021年度に開催される国際会議、計算数理工学シンポジウム、物理学会等の旅費、学会参加費として使用することとした。
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