2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the mechanism of dolphin tail walk and its application for the development of high-thrust underwater propulsion mechanism
Project/Area Number |
18K04047
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 俊一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (50225512)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / バイオミメティクス / イルカ / 生物規範型ロボット / 水中推進 |
Outline of Annual Research Achievements |
水棲生物の中でもイルカの運動能力は高く,胴体を水上に持ち上げる立ち泳ぎができる。本研究ではイルカの立ち泳ぎのメカニズムを,その運動挙動から力学的な解析によるアプローチで解明し,イルカに負荷をかけないトレーニングや健康管理に参考となる資料を提供するものである。また,これらの結果をイルカの尾びれを規範としたフィンによる水中推進機構に技術的に移転して高推力化を実現させる。これより水中推進機構において,単なる遊泳だけでなく,水中における物体の保持,物体の水上へのリフトアップ技術などの実現といった,新たな動作タスクの創出につなげる。 令和2年度は前年度に行った名古屋港水族館におけるカマイルカの立ち泳ぎの撮影結果を用いて重点的に動作解析を行った。特に立ち泳ぎ時の運動(尾びれの平均的な振幅や振動数等)やフィンの変形について解析・検討した。その結果,イルカが前進移動する(腹側方向に移動する)立ち泳ぎは,後退移動する(背側方向に移動する)立ち泳ぎと比べ,振幅は少ないものの高い振動数でリフトアップ量も高いことがわかり,これは背側の腱や筋肉をしっかり包み込む結合組織があるためと示唆された。 さらに,高推力水中推進機構開発への技術移転のための基礎研究として,水中推進機構に用いるフィンをイルカの尾びれの形状にして,静止流体中における推力を計測した。フィンの剛性を変化させて検討したが,イルカの立ち泳ぎ時に見られるような変形が生じる剛性のフィンで推力が大きいことが分かった。これより,イルカの尾びれの変形が立ち泳ぎに寄与することを実験的に明らかにし,推進機構の高推力化には,フィンの変形が重要なパラメータであることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で,大学において研究を実施する時間が大幅に減ったこと,また,水族館における追加撮影が出来なかったことが大きな理由である。これにより,数値解析による力学的な推力の解明と,立ち泳ぎをする推進機構の喫水や胴体の揺れなどを計測するシステムの構築までは至らなかった。 ただし,イルカの立ち泳ぎの動作解析は,撮影動画データを全て大学の研究室に設置したコンピュータにアップロードさせたので,研究協力者が自宅からオンラインで解析ができた。これにより,イルカの水上における前進移動と後退移動のそれぞれについて,喫水位置・移動速度・水中での尾びれの動作(変形)と水上の胴体の動きとの関連を,個体別に検討を行う事ができた。特に,複数台のカメラによる撮影した映像から,水中と水上の動きの解析を同期させて行い,イルカの立ち泳ぎ時のバランスの取り方について,胸びれの動きの解析もあわせて定量的に把握することができた。また,尾びれの変形についても昨年度以上に詳しく解析し,数値流体解析を行う3Dモデルの構築をする前段階のデータを得ることができた。 これらの結果を,イルカの尾びれを規範としたリフトアップが可能な水中推進機構に技術的に移転するためのアプローチとして,静止流体中で揺動運動をするフィンの形状をイルカの尾びれを同じとさせ,その剛性の変化について検討した。推力が高いフィンの変形の仕方は尾びれと同様であることを明らかにし,このフィンを用いてリフトアップが可能な水中推進機構を開発するための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
立ち泳ぎ時の運動解析について残された項目として,前進移動または後退移動を行わない状態,また,移動時における方向転換の際の撮影を行い,それらの動作解析によって,大きな移動を伴わない際や移動方向転換の際の立ち泳ぎの機序の解明についても検討する。なお,撮影方法についても名古屋港水族館と協議して,撮影方法の簡便化やさらなる撮影映像画質の向上を図る。 立ち泳ぎの力学的解明として,本年度の動作解析によって得られた尾びれの変形を伴う動きから,3次元非定常の数値流体解析を行い,尾びれ周りの流れ場や発生推力を求め,大きな推力が発生する要因を解明する。この結果をもとに尾びれの流体―構造連成解析につなげていく。また,これらの解析結果から尾びれや尾柄にかかる力を逆運動解析から求め,イルカになるべく負荷をかけないトレーニングやイルカの健康状態把握のために参考となる資料を提供する。 また,尾びれに相当するフィンを,実際に立ち泳ぎを模擬できるリフトアップが可能な水中推進機構のフィンとして用いる。そのため,水中推進機構の基礎設計を行い,フィンの挙動や変形,機構本体の喫水や胴体の揺れなどを計測するシステムの構築も行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによって,大学における実験・解析時間が制約され,イルカの立ち泳ぎの撮影ができなかったことによって,実験や解析のために予定していた物品購入もできなかったこと,また,出張がほとんどできないために,撮影のための水族館への移動がなかったことや学会発表がオンラインなったことにより,旅費の支出が僅かであったためである。 次年度使用額は,令和3年度請求額と合わせて消耗品費(サーボモータ費,製作用材料費,機械部品費,電子部品費),旅費(撮影,学会講演会参加(対面の場合),論文校正・投稿料として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)