2019 Fiscal Year Research-status Report
真に臨場感を有したVRサウンドを実現するための移動音における方向知覚の解明
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18K04069
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
工藤 彰洋 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (80455097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武居 周 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40598348)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バーチャルサウンド / 音響心理実験 / 音像定位 / 移動音 / 移動速度 / 移動角度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、移動音の最適な移動角度の探索により、移動角度と移動速度が聴覚に与える法則を見出し、汎用の音響伝達特性による移動音の定位誤差を低減することで、高臨場感VRサウンドを実現することである。 初年度(2018年度)は、移動音の最適な移動角度を探索するための第1ステップとして、移動方向の知覚に必要な移動角度を絞り込むための実験を3名の被験者について行なった。 本年度(2019年度)は、被験者数を倍の6名に増やして、昨年度と同様の実験を行なった。移動方向の知覚の正答率は、移動速度(秒速2から32°まで)が増加するにつれて、10%程度減少する傾向が見られた。被験者ごとに、種々の移動速度と移動角度における、移動の知覚に必要な移動角度の推定値を算出した結果、移動開始方位が0°(正面)のときは4°(標準偏差1.5°)、移動開始方位が45°の時では15°(標準偏差9.6°)、移動開始方位が90°(真右)の時では39°(標準偏差32°)となった。このことから、1)側方での移動は正面方向に比べて知覚されにくくなること、2)推定値と標準偏差とが近い値になっていることから、個人差によるデータのばらつきが非常に大きいことが明らかになった。 また、移動方向の知覚の実験から絞り込んだ移動速度と移動角度を用いて、被験者本人と他人の音響伝達特性を用いた移動音の定位実験を2名の被験者について行なった。この結果を、国際会議にて口頭発表を行なった。 さらに、初年度(2018年度)の後半に、被験者本人の音響伝達特性を用いたヘッドホン再生による移動音の定位実験を実施した結果について、日本音響学会2019年春季研究発表会にて研究発表を行ない、その実験結果に分散分析を行なって得た考察をまとめて和文誌として投稿し、本年度(2020年)の4月に採録が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は計6人の被験者について実験を行なったものの、うち2名の被験者については、移動角度の増加に伴って、明確に正答率が上昇する傾向が見られなかった。そのため、移動開始方位が45°と90°については、移動の知覚に必要な移動角度の推定値を算出するためのデータ数が得られなかった。このような理由から、2019年度の成果を論文にまとめて投稿することが出来ておらず、これから実験手法を変更して再度、実験を行なう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に発生した問題の原因が、被験者の判断によるものだったのか、それとも実験の方法を工夫すれば改善できるのかが不明である。そこで、本年度(2020年度)は、実験手法の工夫を検討する。これまでは恒常法と呼ばれる手法で実験を行なってきた。本年度は、前述の問題の原因を明らかにするために、恒常法に加えて、適応法と呼ばれる手法を用いた実験も行なう。恒常法とは、推定値を得るために種々のパラメータを事前に用意して、それらの中からランダムにパラメータ値を選択して評価を行なう方法である。これに対し、適応法とは適当な初期のパラメータ値から始めて、被験者の結果に応じて次のパラメータ値を決める手法である。恒常法で不安定な結果を生じる被験者が、適応法ではどのような結果に至るのかを評価する実験を行なう。これらの結果をまとめて、2020年度中に学術論文として投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度において実施した実験の結果をまとめた論文が、2020年4月に採録が決定し、論文の掲載料をこれから支払うため、一部の予算を次年度に持ち越すことになった。また、昨年度から行なっている移動音の方向知覚の実験結果を、2019年度内にまとめて論文投稿する予定であったが、前述した理由により再度の実験が必要なため、論文投稿費を翌年に持ち越すことになったため、次年度使用額が生じた。
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