2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲルの接着性制御技術を駆使したマイクロゲルアクチュエータの開発
Project/Area Number |
18K04074
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中住 友香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (80738021)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 雄介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (90452135)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アクチュエータ / ゲル / 接着 / 自己組立 / 自己複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、μ-TAS やラボオンチップ分野の発展により、非常に小さな空間で活躍する微小なアクチュエータのニーズが高まっている。このような微小なアクチュエータの作製には、性能を維持したままスケールダウン可能なことに加えて、アクチュエータを構成する微小なパーツをいかに効率よく組み立てるかが重要になる。ゲルアクチュエータは筋肉同様にスケール普遍性を持つため、マイクロメートルオーダーに微小化しても駆動性能を維持することができる。また、ゲルアクチュエータは生命体のような非常に柔らかい動きを簡便に作り出せるメリットを有している。しかしながら鋳型を用いてマイクロゲルアクチュエータを作製しようとしても、鋳型のコストが高いことや、抜き出す際に破損する可能性が高いことが問題であった。このような問題点がある3次元的に複雑な形状をした微小なゲルアクチュエータを作製することは難しかった。本研究課題ではこのような問題点を解決するため、ゲルの接着性制御技術を駆使することで、鋳型に頼らず微小なアクチュエータを空間デザイン可能にすることを目指した。本年度は、ゲルの接着性制御技術を確立するため、ゲルパーツの合成方法を検討するとともに、様々なゲルを用いてゲル同士の接着性について検討を行った。ゲルの表面と反対電荷を持つ水溶性ポリマー等で改質することで、通常は接着することができないゲル同士を接着させ、その接着性等を評価した。また、表面改質を行ったゲルパーツを水槽中に入れ撹拌を行うことによりゲル同士を衝突させ、確率的な衝突のみでもゲル同士が接着可能か検討を行った。また、ゲルを様々な形状にカットして、同様の実験を行い、接着に対するゲルの形状に関する影響についても検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微小なゲルパーツ同士を撹拌のみで接着制御させるため、ゲルの表面改質手法を用いたゲル同士の接着性について検討を行った。通常、反対電荷を有するゲル同士は容易に接着させることができるが、同符号を持つゲル同士を接着させることは難しい。様々なゲル同士の接着を可能にするため、同符号を持つゲル同士の接着をゲルの表面改質手法を用いて行った。同符号のゲルを接着させるため、ゲル表面とは反対電荷を有する水溶性ポリマーを表面に塗布し、接着性の評価を行った。また、電荷を有するゲルの強度は非常に弱く、接着性の評価が難しいため、強度の高いゲルを合成して接着性の評価を行った。さらに、微小なゲルパーツを合成し、ビーカーに入れて撹拌を行うことで、ゲルの確率的な衝突のみでゲル同士が接着するかについて検討を行った。その結果、ゲル同士は確率的な衝突のみでも接着が可能なことを確認することができた。今後は、微小なゲルパーツの形状やゲルの表面改質方法を最適化することで、ゲルパーツを入れた容器に振動を与えるだけで、望んだ形状が自立的に組みあがるような条件を見出していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゲルの接着性制御技術を駆使することで、鋳型に頼らず微小なアクチュエータを空間デザイン可能にすることを目指して、ゲル同士の接着手法について継続的に検討を行っていく。微小なゲルパーツを接着させることによってくみ上げるゲルアクチュエータの駆動特性について、次年度では評価を行っていく予定である。ゲルアクチュエータの駆動評価は、レーザー変位計や高倍率のマイクロスコープ等を用いて検討を行っていく予定である。さらにゲルアクチュエータの駆動耐久性や駆動安定性、発生応力などについても評価を行っていきたい。また、微小なゲルパーツを入れた容器をどのように振動させれば、望んだ形に接着制御できるかについて、表面改質手法やゲルの形状などを合わせて検討を行っていく予定である。ゲルアクチュエータの用途展開についても、合わせて検討を行っていく。最終的には、ゲルアクチュエータの自己複製が行えないかについても検討を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
次年度は、接着性制御により組み上げた微小なゲルアクチュエータの駆動評価装置を、作製する予定である。微小なゲルアクチュエータの評価には、レーザー変位計やマイクロスコープ等が必要不可欠である。それら物品の購入予算として、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画とした。
|