2020 Fiscal Year Research-status Report
高回転仕様で設計された小型表面磁石同期電動機の位置センサレス全速度域駆動法の開発
Project/Area Number |
18K04090
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
長谷川 勝 中部大学, 工学部, 教授 (70340198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 永久磁石同期電動機 / 位置センサレス / オールパスフィルタ / 始動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高回転仕様で設計された永久磁石同期電動機に対する位置センサレス制御法について,広範囲な速度域で安定動作する制御法の開発を行った。よく知られているように,始動を含む低速域での位置センサレス制御においては基本波のS/N比が低下する問題から高周波信号重畳が必須であり,これによって騒音の問題が発生する。以上を踏まえ,本年度は低速域での位置推定性能を大幅に改善することができるオールパスフィルタを用いた手法を基本とし,条件付きながらも従来法では不可能であった高周波信号重畳レスでの位置センサレス始動法を確立した。 方針として,オールパスフィルタの設計がボード線図を用いた定常性能の観点からなされていることに着目し,オールパスフィルタを内包する位置推定器が始動直後に定常状態となり得るための方策を検討した。この結果,位置推定器に含まれる4つの積分器に適切な初期値を与えれば始動性能の改善が見込めるものと判断し,初期回転子位置を引数とする各初期値の設定アルゴリズムならびに始動性能を改善する追加制御系の設計法を開発した。さらに,実機実験により本手法の性能を評価した。本手法によれば,停止時の回転子位置推定において高周波信号重畳をわずかな時間だけ必要とするものの,定格負荷以下の有負荷状態において高周波信号重畳を必要としない安定な位置センサレス始動が可能となり,制御性能と静音化を両立する位置センサレス制御法を実現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初において不可能と考えていた,高周波信号重畳を必要としない位置センサレス始動が実現できており,その手法も確立して既に学術論文としてacceptされた状況となっている。さらには,電気学会研究会で発表し,発表担当学生が優秀論文発表賞を受賞している。 また,研究2年目に取り組んだ位置センサレス制御の低速運転で顕著となる位置推定誤差の周期脈動に対する低減策についても同様に電気学会研究会で発表し,別の発表担当学生が優秀論文発表賞を受賞している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の当初期間である3年間を費やした結果,上記の通りの成果が得られている。期間延長となった今年度はこの成果をもとに国際学会等での発表を行ってさらなる性能改善に努めるとともに,関係各所と協議して実用化の可能性を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの蔓延により,主として学会発表活動が制限されたため。特に国際会議については,講演者としてオンライン開催への対応が遅れたため。残額は,より現実的な条件での実験を可能にするための実験システムの拡充費用と学会発表費用として用いる予定である。
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