2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K04104
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 錫範 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00287963)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小型核磁気共鳴装置 / NMR信号測定回路 / NMR Relaxometry / 高温超伝導バルク体 / 次世代高温超伝導線材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,簡便な方法でNMR信号が計測できる小型の磁気共鳴装置を開発するためのハードウェアとソフトウェアの両方について電磁場数値解析と実証実験に基づいた検討を行っている。開発する核磁気共鳴装置の発生磁場強度は1.5 Tの小型NMR Relaxometryであり,本年度の研究実績は次のようになる。 ① 小型NMR Relaxometry用マグネットの開発:磁場源として高温超伝導バルク体と次世代高温超伝導線材によるマグネットを提案しており,発生磁場強度1.5 Tと磁場補正無しの状態で磁場均一度100 ppm/cm3以上を得るためのマグネットの形状設計と実験的な検討を行った。そして,永久磁石を用いた装置との明確な差別を図るために発生磁場強度を3 Tまで引き上げるための検討を昨年から行っている。そこで,運転温度を40 Kに想定した電磁場数値解析による高温超伝導バルク体マグネットの形状設計を行った。そして,次世代線材によるNMR Relaxometry用のマグネットと人指用のMRI用マグネットを形状設計においては,磁場均一度に大きく影響する遮蔽電流分布が考慮できる解析プログラムを開発した。 ②NMR信号検出用のコイルと制御・駆動回路の開発:NMR信号を検出するためには, 検出コイルと励磁(送信),駆動回路などが必要であり,デジタル式とアナログ式の2種類の信号測定回路について同時に検討している。また,MRI装置においては傾斜磁場コイルも必要であるので,測定対象に対して垂直磁場印加型と水平磁場印加型の2種類の傾斜磁場コイルの形状設計を行い,銅線と銅箔を用いた傾斜磁場コイルを試作した。試作した傾斜磁場コイルの発生磁場精度について室温で測定を行い,設計通りの磁場精度を示していることを確認したので提案した形状設計方法の妥当性を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①小型NMR Relaxometry用マグネットの開発:昨年に続いて励磁用超電導マグネットによる磁場強度1.5 Tと磁場均一度を向上させるための磁性体の形状と配置について検討し,高温超伝導バルク体の形状最適化について検討した。特に本年度は,実用化を想定して高温超伝導バルク体内の臨界電流密度の相違を考慮したバルク体の形状設計を行った。次世代高温超伝導線材を用いたマグネットの場合,非常に高価である線材の使用量を抑える形状のみならずテープ形状の線材構造から起因する遮蔽電流による影響を正確に考慮・評価する必要がある。しかしながら,既存の電磁場数値解析では遮蔽電流について簡易的なモデルを用いて形状設計を行った。そこで,本年度は遮蔽電流を影響について正確に考慮できる3次元電磁場数値解析法を提案して最適形状設計を行った。 ②NMR信号検出用コイル・傾斜磁場コイルと制御・駆動回路:NMR信号を検出するためには,検出のコイルと励磁(送信),駆動回路などが必要であり,MRI装置においては,検出コイルと共に傾斜磁場コイルが必要となる。提案する高温超伝導バルク体マグネットと次世代高温超伝導マグネットの場合は,測定対象に対する印加磁場の方向が異なるので,2種類の傾斜磁場コイルを設計する必要がある。そこで,本年度には2種類の傾斜磁場コイルの形状設計を行い,それぞれ試作した。試作した傾斜磁場コイルの発生磁場分布と精度について室温空間で測定して評価した。その結果,設計通りの性能を示すことが確認できたので提案手法の信頼性が証明された。 ③ 3 T級のNMR/MRIマグネットの開発:本研究の提案時には磁場強度を1.5 Tにしていたが,さらに磁場強度を3 Tに引き上げるための研究を行っている。研究対象はNMR Relaxometryと人指用のMRI用マグネットを想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
高温超伝導バルク体と線材による1.5 T級の小型NMR/MRI用マグネットにおいては,ほぼ予定通りに研究が進んでおり,概念設計が終わり具体的な最終形状設計段階に入っている。信号検出コイルと傾斜磁場コイルの設計について順調に進んでおり,信号計測回路については試作した回路の性能評価を行っている。また,3 T級のNMR/MRI用マグネットの設計についても引き続き検討する。特に、次世代高温超伝導線材の消費量とテープ形状の線材構造から起因する遮蔽電流による影響を減らすための検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年はコロナ禍で殆どの学会がオンラインとなり,予定された学会参加費用が使用出来なかった。また,昨年の実験中に現有している10 T級超伝導マグネットが修理不可の故障を起こして高温超伝導バルク体による実験ができなくなったので,次年度使用額が生じている。そこで,次年度の物品購入と学会参加および装置の移転費用に充てる。
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