2019 Fiscal Year Research-status Report
Electrostatically induced voltage generated in an electronic equipment when a charged body moves away from an ungrounded electronic equipment of floating potential
Project/Area Number |
18K04107
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
市川 紀充 工学院大学, 工学部, 准教授 (60415833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 静電気 / 帯電物体の移動 / 奥行きの異なる非接地金属筐体 / 静電誘導電圧 / 金属筐体内 / 誤動作や故障 / 電子機器設計 / 球ギャップと電磁波センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
放電や静電気はコピー機などに利用されているが,パソコンなどの電子機器の誤動作や故障の原因になる。マイクロエレクトロニクス化に伴って,この種の障害は無視できない大きな問題となっている。例えば電子機器の金属筐体内の電子部品は10ボルト以下の瞬時電圧で故障し,人体などは約10キロボルトかそれ以上の電圧に帯電する。人体などの帯電した物体が電子機器の金属筐体の近くを移動すると,筐体内に生じる誘導電圧が原因で機器の誤動作や故障を引き起こす。申請者は,高電圧の分野で一般に電圧測定に用いられる球ギャップの原理と電磁波センサを用いた独創的な誘導電圧測定法を用いて,帯電した物体が移動したときに電子機器が誤動作や故障を起こさない機器設計を検討してきた。一般にパソコンなどの電子機器の金属筐体は、非接地で使用されることが多い。本研究では,非接地の電子機器の金属筐体から帯電した物体が遠ざかるとき,筐体内に生じる誘導電圧が原因で起こる機器の誤動作や故障の問題を解決することを目的に,次の実験研究を行った。 当該年度の研究では,帯電物体が奥行きの異なる非接地の金属筐体から遠ざかるとき,筐体の奥行き(体積)と,筐体および筐体内に生じる誘導電圧の関係を,次のように明らかにした。(1)金属筐体内の浮遊電位の導体に生じる誘導電圧は,筐体に生じる誘導電圧よりも約1.4倍大きい。(2)金属筐体内の浮遊電位の導体と接地導体間に生じる誘導電圧は,筐体内で放電が起こると,逆極性の電圧になる。(3)金属筐体に生じる誘導電圧は,筐体内で放電が起こると減少するが,電圧極性は変わらない。(4)金属筐体内の浮遊電位の導体に生じる誘導電圧は,帯電物体の電圧とは逆極性で約0.6倍の大きさになる。 本研究の成果は,人体等の帯電物体が奥行きの異なる非接地の電子機器の金属筐体から遠ざかるとき,機器の誤動作や故障の防止設計に役立つと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
帯電した物体が非接地の電子機器の金属筐体から遠ざかるときに起こる機器の誤動作や故障の問題の解決に役立つ機器設計に指針を与えるため、今後は次の実験研究を行う。 「非接地の二つの金属筐体から帯電した物体が遠ざかるときに各筐体内に生じる誘導電圧の研究」 エアコンを使用したオフィス内には,複数のパソコンなどの電子機器の金属筐体がある。そのような電子機器の配置を想定し,非接地の二つの金属筐体から帯電した物体が遠ざかるとき,各筐体内に生じる誘導電圧を2019年度と同様の次の方法で明らかにする。帯電した物体が非接地の金属筐体から遠ざかるとき,筐体内の電界分布を乱さずに誘導電圧を測定することは難しい。申請者は,高電圧工学で使用される二つの球電極からなる球ギャップと電磁波センサを用いて,金属筐体内の電界分布を乱すことなく誘導電圧を測定する。その誘導電圧測定法は,学術的独自性がある。本研究では,帯電した物体がノートパソコンのような電子機器の金属筐体から遠ざかるとき,筐体内の電界分布を乱さない誘導電圧測定法を用いて,筐体内の誘導電圧を明らかにする。このように本研究は,学術的独自性だけでなく創造性もある。 実験研究では,非接地の二つの金属筐体間の距離を2センチメートルから1メートル程度まで変えて各筐体内の誘導電圧を明らかにする。本研究により非接地の二つの金属筐体内の誘導電圧を低減できる各筐体の配置を明らかにする。実験は、卒論生の協力も得て行う。本研究成果は,放電や静電気の分野だけでなく,電子機器内に生じる誘導電圧が機器の誤動作や故障を起こさない機器設計に指針を与え,EMI/EMCの分野にも貢献できる。
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